淫獣捜査 隷辱の魔罠

【3】 USBメモリー

「散らかっているけど……」
「そんな事ないわよ。思ってたより綺麗だもの」

 兄貴の残したUSBメモリーの中味を調べる為、俺アパートへと涼子さんと戻ってきた。
 正直、男の独り暮らし、しかも、なかなか帰って来れない仕事柄もあり、1LDKのアパートはとても女性を連れてくるような状況ではなかった。大量の書籍や通販の段ボールが山積みになり、足の踏み場にも困るほどの酷い状態だった。
 当初、ネットカフェにでもという俺の提案も、涼子さんのたっての希望で、強引に押しきられてしまった。

「だってねぇ、今、貴方がどんな生活しているのか興味があったんだもん」

 困惑する俺を尻目に、物珍しそうに部屋の中でキョロキョロしていた彼女は、振り返ると悪戯っ子のよに微笑みながらそう言った。

「さ、さて……早速、調べようかな」

 そんな彼女にドキマギしているのを隠すように俺は慌てて奥の部屋へ入ると、起動しっぱなしのパソコンの前に座り、USBメモリーを接続する。
 それには簡単なプロテクトがかかってはいたが、試しにいくつかの思いつくキーワードを打ち込んでみると、簡単に解除できてしまった。

「こんな簡単なのじゃ、プロテクトの意味が無いよ」

 彼女の誕生日という安易な暗号を考えた兄貴に対し、俺はブツクサと文句を言いながら作業を進めていく。
 兄貴も彼女ほどではないがパソコンとかは苦手で、よくフリーズさせては直してやった記憶が蘇り、俺は知らず知らずのうちに口元を綻ばせていた。
 その間も、指先は隈なく動き続けキーボードを打ち続ける。その様子を、すぐ横にあるベッドにちょこんと腰掛けた彼女が、感嘆と賞賛に入り混じった目で覗き込んでいた。

「これで……よしっとッ!!」

 俺が作業を終え、最後のキーを打ち終えると、画面上にはUSBメモリーの中味が次々と表示されていく。
 それは、何かのリストと動画ファイルのようであった。

「まずはリストから……なんだろう? 凄い桁の数字がいっぱい並んでるけど……」
「どうやら、取引内容を表しているようね……信じられない金額だけど」

 俺の左肩に細い指先を乗せ、肩越しに画面を覗き込んできた彼女が耳元で呟く。
 その言葉に、俺はもう一度画面を見直した。このリストが正しいのであれば、一晩で億単位の金が動いている事になる。

「それじゃ、もう一つの方もお願い」

 彼女の言葉に促されて、俺は動画ファイルを開き、その中身をモニターへと映し出した。
 
 
 どこか広い空間なのだろう。真っ暗闇の中、スポットライトで照らされた画面中央だけがクッキリと浮かび上がっていた。
 そこには、全裸の女性が佇んで……いや、正確には、その女性は白い素肌を黒革の拘束具で惨たらしく縛められ、頭上から垂れ下がる鎖によって吊るされていたのであった。
 両腕は背後に揃って伸ばされ、指先から二の腕までを大きな革袋のようなモノで覆われて、太いベルトで厳重に縛られていた。
 更に袋口から伸びたベルトが、肩から反対の脇の下を抜けるように締め付け、拘束具から抜け出せないになっており、拘束具の指先に取り付けられた金具から伸びた鎖が頭上へと伸び、女性を前屈みの体勢で吊り上げていた。
 胸元で交差したベルトと乳房の上部に食い込むベルトによって、豊満な乳房は無残に搾り出されおり、女性が蠢くたびにユサユサと卑猥に揺れてみせる。
 下半身は、黒いゴムのような素材のパンツをはかされており、そこから2本のケーブルが延びて暗闇へと消え、えらく高いピンヒールを履かされたスラリとした長い足は、左右に大きく開かされ、足首に嵌められた足枷から伸びた鎖で、床にしっかりと固定されてしまっていた。
 がっしりした首輪の嵌められた先にある顔は黒いマスクで覆われており、唯一、口元にポッカリ開いたリング状の穴より、ピンク色の舌が突き出されていて、そこから滴り落ちる唾液が、スポットライトの光を浴びて怪しく濡れ光った。
 随分、その姿勢を強いられていたのだろう、拘束具の合間から見える柔肌にはびっしりと汗の珠が浮き出ており、女性が時折、ビクッと動くたびに、飛沫を飛び散らせていた。
 
「……なッ!? こ、これは……」
 
 映し出されたあまりの情景に、頭が追いつかない。
 
(AVとか……では、ないよなぁ)
 
 気になって、俺は横目で涼子さんの反応を伺いみるのだが、彼女は真剣な眼差しを画面へと向けていた。
 だが、その頬がほのかに赤く染まっているのに、俺は気がついてしまう。
 そうしているうちに映像の方に変化が現れた。暗闇からスポットライトの輪の中へと一人の男が入ってきたのだ。
 白いスーツを着こなし、シルバーフレームの眼鏡をかけたインテリ風の男は、どこか芝居かかったように一礼すると、正面の暗闇に向かって喋り出した。
 
「選ばれし皆様、今宵も当クラブへ、ようこそいらっしゃいました」

 その男の姿と声を聞いた途端、左肩に置かれた彼女の手に力が入るのを感じた。

「……紫堂……」

 そう呟く彼女の横顔を再び見ると、そこからは表情が消え、画面を見つめる瞳には怒りの炎を静かに宿していた。
 そんな今まで見たこともない彼女の様子に、俺はいいようのない不安を感じてた。





もし、読まれてお気に召しましたら
よかったら”拍手ボタン”を
押して下さいませ。


web拍手 by FC2