淫獣捜査 隷辱の魔罠

【46】 エントランスホール

 扉を抜けると、煌びやかなエントランスホールが目の前に現れた。
 広々とした豪勢な空間はまるでオペラ劇場のように優に3階分は吹き抜けになった円形になっており、そのバルコニー状になった2階部分にいくつも設置された扉の一つから俺たちは入ってきた。
 鏡のように映り込むぐらい磨かれた白い大理石の床に、靴底が埋もれるぐらいのフカフカのワインレッドの絨毯が敷かれており、その上を支配人を先頭に、牝犬たちは進んでいくと、すれ違うボーイたちが恭しく頭を下げ、俺たちを出迎えた。
 エントランスホールの中央には、直径が10m、高さは2階層分はありそうな円柱状の巨大な水槽が設置され、その中を様々な魚たちが泳いでおり、その周囲に置かたソファでは目元を隠すマスクと高級スーツに身を包んだ参加者メンバーたちが、各々談話を楽しんでいるのが見えた。
 そんな彼らの足元には、ボンテージ姿や黒革の拘束具で戒められた女性たちが跪き、黙々と奉仕を行っており、天井から吊り下げられたいくつもの大型モニターでは、施設内で行われている調教の光景が映し出されている。


―― あるモニターでは、天井より吊り下げられた女性が、腹部が妊婦のように膨れ上がるほど大量の浣腸液を注入され、苦悶の表情をで身悶えする尻肉に何人もの男たちによって代わる代わる鞭が振り下ろされていた…… ――

―― あるモニターでは、大量の淫具を装着された女性が、裸体を巨大な水車に大の字に磔にされ、回転して逆さまになるたびに上半身を水面下に水没させられ、酸欠に美貌を歪めながら磔の裸身を肉悦に震わせている…… ――

―― あるモニターでは、何人もの女性たちがバイブを設置されたロディオマシーンに跨らされ、激しい動きに突き上げられ、淫らな牝顔を晒しながら競わされて、賭けをしてる男たちを楽しませていた…… ――

―― あるモニターでは、厳しく拘束されても尚、勝気な表情を崩さない女性に対し様々な媚薬を投与されていき、焦らし悶える姿を肴に、男たちが酒を酌み交わし愉しんでいる…… ――


 そんな光景が設置された各種モニターに定期的に切り替わり映し出されていく。それらに興味を示した者は、手元のタブレットで検索して現場に足を向けているようであった。
 目の前で繰り広げられる行為の数々をごく普通の事のように捉え、自然に楽しんでいる者たちの中に、俺は足を踏み入れた訳だが、流石に緊張で掌にはじっとりと汗を書き、口の中がカラカラに乾いていた。

「どうだ? 面白そうなモンがあるんなら、よかったら後で案内するぜ」

 バルコニーを歩きながら横目で周囲を観察していた俺に、並んで歩いていたタギシさんはニッと白い歯を見せ微笑む。

「正直、びっくりしすぎて何から手を出せばよいのやら……それに彼女らも気になりますしね」

 俺は敵地に入った緊張で固くなった表情を誤魔化すように肩を竦め苦笑いを浮かべると、前を四つん這いで歩くヒトイヌ拘束姿の涼子さんたちに目を向けた。
 こんな敵地の真ん中で、涼子さんから目を離すのが正直、不安であるのも事実だった。だが……

―― この中からオーナーである紫堂を見つけ出し、施設内にいるのを確認した後、発信機のスイッチを押す ――

 涼子さんと兄貴の上司であった駿河さんからの依頼を心の中で思い出し再確認すると、ポケットに忍ばせているライター型発信機の感触を確かめる。
 そんな緊張で強張っている俺に、ナナさんは脇から覗き込むようにして見つめてきた。

「この後、あの牝たちは洗浄作業など行ったのち少し次の準備で時間が空くと思います。ですので、折角ですし施設内を見学するのも良いと思いますわよ」

 ナナさんはそう言うと、俺に向かってニッコリと微笑んだ。

「私もその間に、着替えとかいろいろしたいと思いますわ」
「なんだよぉ、ナナはいなくなるのかよ」
「こう見えても、忙しい身なので、イロイロとやる事があるのです。でも、すぐに戻ってきますわよ」

 残念そうにするタギシさんの言葉に、ナナさんは苦笑いを浮かべると、俺にウィンクを飛ばしクスリと笑った。
 その仕草が妙に可愛くて、つられて俺の口元にも笑みが浮かぶ。お陰で、ガチガチに強ばっていた俺の心が解れていくがよくわかった。

「むー……あーあー、俺も優しくしてくれる奴隷ちゃんでも見繕ってこようかなぁ」

 見つめ合い、微笑み合う俺とナナさんに、横にいたタギシさんが不貞腐れたようにボヤき始める。

「そんな奇特な子なんていましたかしら?」

 にこやかに微笑みながらザクっと胸に刺さる言葉を投げかけるナナさんに、うっと胸を押さえ、タギシさんは呻く。

「俺には、これだよ……ホント、ルーキーはよく手懐けたよなぁ」
「ははは……手懐けたというか、手懐けられたというか……」

 拗ねるタギシさんに笑って誤魔化しつつ、気を回してくれたナナさんに素直に感謝していた。

「もし、お急ぎで御用がある場合は、ブレスレットのボタンを押して下さいね。すぐに参りますから」

 俺の耳元に口を近づけると、彼女はそっと囁いた。
 その言葉に、この会場に到着してすぐに装着させられたブレスレットに目を向けた。
 手首にカッチリと嵌った銀色のブレスレット、その表面にある赤くほんのり光るボタンにそっと指を触れて、その存在を確認する。
 すっかり馴染み、忘れがちであったが、これが施設内での身分証明書になるのだった。
 改めて周囲を観察すると、男性メンバーは皆、一様に同様のブレスレットを左手首に嵌めていた。
 それは所々に待機しているボーイたちも同様のようであった。そんな彼らは、荒事専門の屈強な黒服たちと比べると、華奢な体つきに優しげな顔立ちをしている者も多く、その代わり動作はえらく洗礼されていた。

「あぁ、見えても、皆、格闘技の訓練を受けてますから、気を付けて下さいね」
「えぇ……ていうか、俺が何を考えているのか、ナナさんには筒抜けですね」
「はい、貴方様が何を望まれているのか、常に気にしておりますから」

 こんな状況下でなければコロッといってしまいそうな魅力的な笑顔を向けられ、本来の目的を忘れてしまいそうになる俺がいた。

(涼子さんの事がなければ、間違いなく溺れてるな……)

 こんな普段は縁のないような美女に、優しく微笑みかけられ、有頂天にならない男の方がどうかしているだろう。

―― それは、私が貴方様を――――――…… ――

 脳裏に外で抱擁と共に彼女に耳元で囁かれた告白を思い出し、俺は慌てて顔を俯かせる。

「なに珍妙な表情を浮かべているんだよ、ルーキー」
「いや……ちょっと……ははは……」

 そんな俺の顔を目ざとく覗き込むタギシさんに、俺は苦笑いを浮かべて誤魔化すのだった。



 そうしている間にも、集団は別の通路に入りこみ、一つの扉の中へと入っていく。
 そこは幅が3mほどの通路になっており、その両側が厚いガラスの壁になっていた。そのガラスの向こうは、細長いシャワールームや手術室を連想させるような白く無機質な部屋だった。
 涼子さんと千里さんを除いたヒトイヌの女性たちは、ガラスの壁に設けられた扉を抜け、向かって左の部屋へと連れていかれると、ガラス壁の向こうで等間隔に並ばされた。
 ひとりひとり大きな枕程の小さな緩衝材のついた台の上に胴体部分を載せ上げられ、腰に回されたベルトで台にカッチリと括りつけられると、更に、床から伸びた鎖が手足の拘束具に繋がれて、四つん這いの状態でガッチリと固定されていく。
 そうして彼女ら全員の四肢が固定されると、胴体の下にある台が斜めに持ち上がり、尻を高々と突き出すようなポーズにガッチリと彼女らが拘束されてしまった。

「あぁ、いひゃ……」

 彼女らの目の前の床に埋め込まれたモニターには、そんな自分の痴態が映し出され、口々に口枷の下で嘆くように呻き声を放つ。
 そんな光景をガラス越しに、俺と涼子さんたちは見させられ、頭上に並ぶモニターには、ガラスの向こうにいる女性たちの詳細な個人情報と共に今の状態が一人一人確認できるようになっていた。

「これから……いったい……」
「これから、彼女らのアナルの洗浄作業が行われますわ」
「それって涼子さんたちみたいに……」
「はい、浣腸です。ただし、腸内洗浄が目的なので排泄を我慢させるような責めはしませんわ」

 そうナナさんが説明をしてくれている内にガラスの向こうから黒服たちが退去すると、ビニールのような光沢のあるツナギを来た作業員たちが別の扉から入ってきた。
 彼らはそれぞれ拘束された女性たちの後ろに立つと、黙々と作業を開始するのだった。





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