淫獄病院 囚われし美しき患者たち

【3】 豹変する逃走者

 翔子は、目的の街へと入ると愛車である4WDの速度をゆっくり落した。

「こう人目のある所に出れば、一先ずは安心ね」

 そこは山間にある小さな街だった。近くには温泉が出るのだろう、所々に温泉旅館の案内が立ち並ぶ。そんな看板に混ざるように、白髪の男性が優しく語りかけてくるようなポスターがあちらこちらに貼られていた。
 
(……地元の政治家かしら?)

 仕事柄、政治関係にも一通り知識のある翔子であったが、その顔には見覚えはなかった。

「まぁ、専門って訳でもないしねぇ」

 苦笑いを浮かべ肩を竦めると、なるべく大きい通りを選んで車を走らせた。
 あまり活気のある街ではないのだろう、街は人気がなく、対向車に出会うこともなかった。
 
「随分と寂しい街ねぇ……工具とか売ってるお店があるかしら?」

 予想してたよりも寂れた雰囲気に、翔子も段々と不安になってきていた。
 だが、幸運にも彼女は、しばらくすると小さな金物屋を見つける事ができた。
 昔ながらの小さなお店で、金属のタライから大工用具まで、店内には所狭しと物が置かれていた。そんな中から南京錠を切断する為の工具をいくつか見つけ出し、購入する事ができた。
 そして、それを終えると翔子は車を、郊外に向けての走り出すのだった。
 街に入るまでは普通の旅館をと考えていたが、後部座席の女性の姿に気が付き、それは断念していた。
 とはいえ、グッタリとしている彼女を一刻も早く拘束から解き放ち、休ませてあげたかった。そこで、道中の旅館案内に混ざるように掲げられていたモーテルの看板を見つけ、そこへ向かうことにしたのだった。


 そのモーテルは、広い敷地の駐車場を囲むように何棟もの建物が点在するような造りとなっていた。
 翔子は、駐車場の入り口の建物にある受付で手続きをすませると、一番離れにある部屋を借りうけ、その前へと愛車の乗りつけた。
 そして、人目に付かないように注意しながら、グッタリと気を失っている女性を苦労しながら抱えあげ、借りた部屋へと潜り込んだ。

(ふぅ……あぁ……なんか見てると……変な気分になっちゃいそう)

 翔子は抱き上げた女性のあまりにも煽情的な姿に、どんどんと自分の心臓の鼓動が激しくなっていくのに戸惑っていた。

「さ、さーて……ま、まずはその口の鍵をなんとかしないとね」

 そんな自分を誤魔化すように、翔子は慌ててベッドの上に女性をうつ伏せに横たえると、車から先ほど購入した工具や自分の荷物を運び込んだ。
 そして、女性の脇に膝を付くと、工具で慎重に南京錠を切り始めるのだった。


「ふぅ……やっと切れた」

 女性に傷を付けぬように気を使いながら、翔子は南京錠を切断しては、慣れぬ拘束具の戒めを苦労しながらもひとつひとつ解いていった。
 そうした過程の途中で、目を覚ました女性 工藤 霞から、翔子はようやく詳しい事情を聞きだす事にも成功していた。
 
「どう、立てる?」
 
 翔子は、独りで立つこともままならないほど衰弱していた霞を支えると、自らもショーツ姿になり彼女にシャワーを浴びせさせた。熱い湯を浴びせながら、緊張と拘束によって強張った筋肉をほぐすように、丹念にマッサージをしてあげた。それを終えると、彼女の身体を拭いてやり、備え付けのバスローブを着させるのだった。
 そうしてやると、霞の心身の緊張の糸が再び切れたのであろう。再び、ガクガクと体を震わせ始めた彼女の身体をギュッと抱きしめ、二人でベッドの縁に腰掛けた。
 そんな状態でも、霞は話すのを止めようとはしなかった。自分の身に何が起きたのか、途切れ途切れになりつつも、必死に翔子に伝えようとしていた。

「……そうすると、貴女を追っていたのは暴力団の人間なのかしら?」
「わかりません……ただ……監禁されていた所は、白い白衣を着た医師や看護師みたいな人が何人もいて……まるで病院みたいでした。私は、彼らにまるでモルモットや実験動物を見るような目で見られ……いろんな薬や……実験をされ……ました……」

 震える唇でそう告白した霞は、思い出しているうちに恐怖に襲われたのだろう、ブルブルと肩を震わせる。そんな彼女を翔子はそっと包み込むように優しく抱きしめた。

(なんて酷い……)

「そんなヤツら許せないわ! 辛いでしょうけど……やっぱり警察に行きましょう!!」
「――ケイサツ?」

 翔子にはジャーナリストとして、そのような悪事を放って置くことが出来なかった。

「そう、すぐにでも警察に連絡しましょう。大丈夫、私の知り合いの刑事さんなら、いいようにしてくれるから……」

我が身の様に憤慨すると、抱きしめた霞の背中を優しく擦りながら、優しく諭すのだった。
 だから、翔子はその時、抱きしめている霞の表情が徐々に変化していく事に気が付く事が出来なかった。
 だらんと力なく垂れ下がっていた霞の手がゆっくり持ち上がり、彼女の肩を掴んでいた翔子の手をギュッと強く握り締めた。

(……あら?)

 その時になって翔子は、霞の手が異常に火照てる事に気が付いた。慌てて身を離すと彼女を見た。
 すると霞は、まるで熱病にでも冒されたように首筋や目の周りをポッと桜色に染め、荒くなった呼吸によって胸元が大きく上下していた。

「ど、どうしたの……だ、大丈夫?」
「なんだか……ボーッとしてきちゃって……はぁぁぁン」

 霞は熱い吐息をはくと、濡れ光る舌先で上唇を舐める。そんな彼女の様子に卑猥さを感じ、翔子はドキッとした。

(ど、どうしたのよ、急に……!?)

 翔子の腕の中で悩ましく体をくねらせ、ジッと見上げる瞳はどんどん潤んでいき、困惑する彼女の顔を映し出していた。

「ちょっと霞さん……キャッ!! だ、だめ……だめよっ……ウッグッ! ウンッ! ウグッ!!」

 そして霞は、突然、先ほどまで独りで立つのもおぼつかなかった身体とは思えない力で翔子をベッドに押し倒すと、美唇を重ねてきた。

「ちょ、ちょっと……どう……した……ウグッツ!!」

 霞は押さえ込むように翔子の腰に上に跨りながら、再び唇を重ねる。そして、朱唇を強引に割り、荒々しく舌を挿入してきた。

「うふっ……ウンンッ! ンンぅぅッ!!」

 濡れた舌先で歯茎を、歯の裏を、そして上顎をと、翔子の口内を霞の舌が蹂躙し、舌同士を絡められ、強く吸われる。
 同姓にキスされる嫌悪感から必死に押しのけようとする翔子であったが、彼女の手は、霞の左手によって頭上へと引き上げられ、手首を交差するように捕まれ凄い力で押さえ付けられてしまった。
 霞の唇から逃れようと必死に左右に首を捻れば、今度は右手でガッシリと顎を掴まれ固定され、左右から強い力で顎を押され無理矢理に口を開かされてしまった。
 そして、再び霞の舌が翔子の口内を蹂躙する。
 
「ひゃ、ひゃめ……うっぐッ……うふッ……んんッ!!」
 
 そんな霞のキスの手腕は、翔子の今までの恋人たちでは感じたことの無いものであった。荒々しくも濃厚なキスによって与えられる背筋の痺れるような快感に、次第に嫌悪感も薄れ始め、激しく抵抗していた身体から徐々に力が抜けさせていく。
 そうして、激しい快楽に悶えさせられ続けた翔子は、次第に霞の舌を受け入れはじめ、舌を絡め合い、口移しで流し込まれる唾液を嚥下するように受け入れてしまっていた。
 男のとは異なるねっとりとしたキスを熱い吐息を放ちながら交わすたびに、二人の舌を繋ぐ唾の糸がキラキラと光った。


 そうして、たっぷりと30分は貪るようなキスをしていたのだろうか。霞はおもむろに自分のバスローブを脱ぐと、グッタリとして焦点の合わない翔子の腕を掴みベットボードに帯で縛り付けていく。
 そして翔子の両手をしっかり縛り付けると妖艶に笑みを浮かべるのだった。その表情には、先ほどまでの知的な彼女の面影はなく、まるで欲情した娼婦のようであった。
 霞は、目を爛々と輝かせながら翔子のバスローブに手を伸ばしその帯も解くと、胸元を掴んで荒々しく左右に引っ張り、見事に盛り上がった翔子の美乳がプルンと弾け出した。

「綺麗で大きな乳房ねぇ……あらあら、乳首はもうしっかり立ってるわ」
「いったい……ねぇ、霞さん、どうしたの? ……クウゥ!!」

 いきなり霞に尖った乳首を指で弾かれ、翔子は両腕をベッドに高々と縛りつけられた身体を仰け反らせた。

「今は質問はナシよ……黙ってて、今はイイ事をしましょうね」
「じ、じゃぁ……これを解いて、ねぇ! お願い……アンッ!!」

 豹変した霞の様子に戸惑いながらも、必死に状況の打開を図る翔子だが、そんな彼女を霞はどこか冷たい光を放つ瞳で見下ろした。

「ダーメ、黙ってられないみたいだから……こーして、あ・げ・る」
「なっ、や、やめ……ウグッツ!!」

 霞は、そばにあったタオルを丸めて筒状にすると、翔子の顎を摘み限界まで開かせたその口に無理矢理ソレを押し込んだ!

「――うぐッ! うげぇッ! むゥゥッ! ……ふぐぅッ!! ぐーッ、うぅぅぅッ!!」
「あはははははッ!」

 霞は笑いながら両手で翔子の口元に体重をかけて、どんどんとタオルを喉奥まで押し込んでくる。拘束され彼女に馬乗りにされている翔子には、そのあまりの苦しさに目を見開き、涙を流しながら、かすかにビクビクと身体を震わせることしか出来なかった。

「大丈夫よ、ちゃんと鼻で息をしなさい。男性のを口で奉仕していると思えば大丈夫でしょう? ふふふ……」

 霞は、真っ赤になって一所懸命に鼻で息をする翔子を見下ろし妖艶な笑みを浮かべる。

「でも……ちゃーんと言うことを聞かずに暴れるようだと……こうしちゃうわよ!」
「フグッ!? ――ンーッ! ンッンー!!」

 霞は無造作に翔子の鼻を摘んだ。呼吸を絶たれ、徐々に翔子の顔が真っ赤になっていく。涙が溢れ出した瞳が大きく見開かれ、必死で霞の指を鼻から振りほどこうと首を左右に振り続ける。そして、縛られた手が何かを掴もうとするかのように虚空に向けて指が蠢き続けた。

「ムッフーッ! ウフッ! ウフッッ!!」
「あははは……あらあら、鼻水出てしまったわね。折角の美人が台無しだわ」

 不意に鼻を摘まれていた指が離された。その途端、必死に新鮮な空気を求めて息を吸い込む翔子の鼻からは、勢いあまって鼻水が飛び出すと、霞は笑いながら優しくタオルで拭うのだった。

「……で、ちゃーんとわかったかしら?」

 まるで駄々っ子に言い聞かせるような霞の言葉に、翔子は恐怖で顔を引き攣らせ、必死で首を縦に振った。そんな彼女の様子に気分を良くしたのか、霞は翔子の顔に手を伸ばすと、優しく頬を撫でた。
 
「ふふふ……いい子にしてたら、うーんと気持ちよい想いをさせてあげるわよ」

 霞はそう言うと、今度は残忍な笑みを口元に浮かべながら、冷たい嗜虐の光を宿した目で翔子を見下ろすのだった。
 
 
 


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