黒い辻風と調律師

【10】 月下の激闘

――ピチャ、ピチャッ……

 クロの細く繊細な指が辻風の膣内の繊細な部分を刺激しながら出し入れを繰り返し、淫らな水音が寝室内に響き渡り始める。

「あぁ……いやッ……」

 それが凄く恥ずかしく感じられて、辻風は羞恥で真っ赤に染めた顔を弱々しく左右に振るのだが、その心に反して引き締まった彼女の腰は淫らにうねっていた。
 クロは、そんな彼女の仰向けになっていても形の崩れぬ見事な乳房の先端で、堅くしこったピンク色の乳首にそっとキスをするとゆっくりと口に含む。

「ハァ、ハァ、ハァ……うッ、くぅぅッ……はぁぁぁッ……」

 途端に辻風の口から熱い吐息が溢れ出し、トロンと惚けて虚空を見上げていた瞳を涙で潤ませていく。

「あッ、あッ……あぁン……」

 当人すら知らなかった快楽の源泉を次々と的確に刺激され、辻風は今までに感じたこともない肉悦に翻弄されながら、クロの手で確実に昇りつめていく。
 だけど、あと少しという所で、クロの手がピタリと止まる。何度も何度も絶頂を迎えさせられてからは、一転してそうした寸止めの責めが延々と続き、辻風の身と心を焦らし続けていた。

「あぁぁぁ……そんなッ……」

 身体の芯から求められる肉悦の欲求に押され、辻風の口から切なげな呟きが漏れる。すでに自分が何を口走っているか気にする余裕もなく、ただ切なげに眉をキュッと歪め、瞳を涙で濡らしていく。
 そんな彼女に対してクロは何も語らず、ただ優しげに微笑むだけで、辻風の身体が落ち着き始めるのを見定めると再び愛撫を開始していった。

「ハァ、ハァ……くぅ……あぁぁぁぁ……」

 全身に浮き出た汗を打ち払うように両腕を拘束された身体を蠢かし、少しでも快楽を得ようとする。その姿は超一流の殺し屋の姿ではなく、ただ悦楽に翻弄されるか弱い牝の姿であった。
 だが、そうやってクロによって与えられる悦楽は決して彼女を満たそうとしない。
 いつもの彼女なら、もしかしたらそれに耐えられていたかもしれない。だが、少し前までクロによって与えられた心の芯を満たすような何かと、彼女自身がこれまでに感じた事もないような絶頂感を与えられた今となっては、心も身体もそれを欲してしまっていた。

「くッン……あぁぁッ……も、もぅ……」

 辻風の小さな呟きに、クロは彼女の頬に手を添えてジッと彼女の瞳を覗き込む。
 その視線を熱く潤んだ瞳で見つめ返した辻風は、切なげに首を左右に振ると目尻からハラリと涙を零した。

「あぁ……だめ……やっぱり……言えない……」
「もぅ、本当に強情ですね、辻風は……でも、そんなところも僕は好きですよ」
「あッ……あぁぁ……」
「ほら、辻風の身体はこんなに反応して欲してますよ」

 膣内から抜いたクロの指は愛液でグッショリと濡れており、窓から射し込む月明かりを浴びて妖しく光りを放っていた。
 それを見た辻風は少女のように顔を真っ赤にして、目尻に涙を浮べる。

「……恥ずかしい……」

 普段なら口にしないそんな言葉も、心の中にいるもう1人の自分に背を押される今の辻風には素直な気持ちとして吐き出せた。
 そんな辻風の反応にクロは嬉しそうに微笑み、その濡れ光る指先で彼女の唇をなぞる。

「くぅン……あぁぁ……」

 その感触にゾクゾクっと身体を震わせ、美唇を開き、白い歯を見せる辻風。
 そんな彼女の口に、クロはゆっくりと愛液で濡れる指先を押し入れた。

「あッ、いや……うぐッ……」

 戸惑いの声をあげる辻風を無視して指をどんどんと口腔へと押し入れると、言葉とは裏腹に彼女はクロの指に舌先を絡めていった。
 口の中に愛液の味が広がり、それによって自分の牝の部分を感じると膣が勝手にキュッと反応してしまう。
 
「うぐぅ……ハァ、ハァ……うむッ……」

 いつしか辻風の目は閉じられ、表情には恍惚とした様子を浮かべ、クロの指を頬を窄めて咥えては、一心不乱に舌を這わせていた。
 そんな彼女の口からクロが指先をゆっくり抜き出すと、名残惜しそうに彼女の舌が後を追い突き出される。
 その様子にクロは微笑み、辻風の耳元にそっと口を近づけて優しく囁きかけた。

「さぁ、素直に、おねだりしてごらん? もう、できるでしょう?」

 その言葉に辻風は恥ずかしげに頬を赤く染めながらおずおずと頷くと、ゆっくりと唇を開くのだった。



 月明かりの下、広い庭園で異形の殺し屋3人と瑠璃の激闘は続いていた。

――ガキッ!!

 せむし男が繰り出す巨大鋏の刃を瑠璃はチェーンソーで受け止める。
 背後から掴みかかろうと迫る巨漢の腕を蹴り上げてその反動を利用して宙返りをすると、せむし男の上を飛び越え、ひとまず間合いを取った。

「ハァ、ハァ、ハァ……ホント……しつこいですねッ」

 息を乱す瑠璃の全身には多くの切り傷が刻まれ、そこから滴り落ちる血によってラバーメイド服を赤く染めあげつつあった。
 それを見て瑠璃は僅かに表情を曇らせる。

「ハァ、ハァ……血を……少々流しすぎた……かも……ハァ、ハァ、これ以上流すと面倒な事になるので……いっきに決着をつけますよッ!!」

 瑠璃は再びニッコリと笑顔を浮べると、巨漢に向かって駆け出し、一気に距離を詰めていく。

――ブォンッ!!

 轟音を響かせながら迫り来る鉄の拳を地を這うような低い姿勢でやり過ごすし、その股下をスライディングの要領で潜り抜けながら、チェーンソーで切り上げる。そして、巨漢の背後に潜んでいた多節十字槍を構えた女へといっきに肉薄した。
 不意打ちで、間合いの内側に入り込まれてしまい慌てる女に対し、瑠璃は手にしていた重いチェーンソーを手放すと、勢いそのままに飛び蹴りを喰らわせた。

――ベキベキッ……

 確実に肋骨を何本かへし折った感触が足裏から伝わり、女はそのまま激しく吹き飛ぶと芝生の上で俯いたまま動かなくなった。
 背後では、巨漢が血を噴出す股間部を押さえながら派手な音を立てながら倒れこむところだった。
 そんな彼らを尻目に、瑠璃は次のターゲットであるせむし男に向けて踊りかかる。
 落下する瑠璃を迎え撃つように突き出される巨大鋏の刃を両手で挟み込んで掴み、そのままの勢いで宙返りをして相手の肩の上へと正座するように着地して、スカートの中でせむし男の頭をガッシリと膝で挟み込む。

「よいしょっとッ」

 可愛らしい掛け声と共に勢いよく身体を捻り、その力を利用して相手の首を捩じ上げる。

――ゴキキッ……

 頚椎が嫌な音を立てながら、せむし男の首が捻じ曲げられ、あらぬ方向へと向いた。

「……よっとッ」

 スタッと新体操の選手宜しく瑠璃が両脚を揃えて地面に着地すると、その背後でせむし男もドサッと力なく地面へと倒れ伏せるのだった。

「ふーッ、流石に今回は危なかったかも……さて、トドメ、トドメっと」

 大きく息を吐き出し身体の緊張を解いた瑠璃は、鼻歌交じりに芝生の上に転がる愛用のチェーンソーへと手を伸ばすのだが、その肩を急にビクッと震わせた。
 チェーンソーを素早く手に取って、その場を飛び退り、武器を構えながら振り向いた瑠璃の視線の先には、煌々と輝く月を背にひとりの男が立っていた。

「そんな……瑠璃が今まで気が付かないなんて……」

 先ほどまでまるで気配を感じなかったのに、今は肌がビリビリと震えるほどの威圧感を発しながら立っているのは見事な銀髪の初老の男だった。
 逞しい肉体が漆黒のボディスーツからを窺え、その上から黒いコートを着こんでいるのだが、その左腕は肩から先が中身が無くただ風になびいている。
 目元をラップアラウンド型のサングラスで隠している為に、その表情は読みずらかったが、瑠璃はその男に見覚えがあるような気がした。

「以前に……お会いしてましたっけ?」

 武器を構え対峙しつつ、瑠璃は眉を顰めて隻腕の男に声を掛ける。
 だが、その問いに男は黙って答えず、瑠璃の存在を無視するかのように、スタスタと屋敷に向かって歩き出した。

「えッ!? ちょ、ちょっと……ッ!?」

 呼び止めようとする瑠璃であったが、その足を巨大な手がガッシリと掴んだ。

「し、しま……」

 目の前の隻腕の男の発する異様な威圧感に気を取られていた瑠璃は、それに反応するのが僅かに遅れてしまった。
 慌ててチェーンソーで薙ぎ払おうとする瑠璃であったが、その全身を激しい高圧電流が駆け巡る。

「――ッ!!」

 手足が硬直し、綺麗な黄金色の髪が逆立ち、瑠璃の小さな口から声にならない悲鳴が溢れ出す。
 放電はわずか数秒であったが、それが終わると瑠璃の手からチェーンソーが滑り落ち、その後を追うように小柄な身体がガックリと芝生の上に崩れ落ちた。

「あ……ぐッ……」

 目を見開き四肢をピクピクと痙攣させる瑠璃の目の前で、芝生の上に倒れこんでいた女とせむし男がもぞもぞと動き出す。彼らは懐から無針注射器を取り出すと、それを自らの首筋に押し付けた。

――プシュッ

 どんどんと注射器内の薬液が体内に注ぎ込まれてビクッと大きく身体を痙攣させたかと思うと、彼らはユラリと立ち上がり、それぞれ足元に転がった武器を拾い上げ歩き出す。
 女は隻腕の男と共に屋敷へと向かい、せむし男は首をあらぬ方向に曲げたまま瑠璃の方へと大型の鋏を引きずりならがにじり寄って来る。

「ま……まって……」

 動かぬ身体で唯一動かせる瞳で隻腕の男と女が玄関から屋敷内へと消えていくのを見つめ、僅かに言葉を絞り出す。そんな瑠璃を、いつのまにか起き上がった巨漢の男が、おもむろに持ち上げると地面へと叩きつけた。

「――がはッ!!」

 地面に叩きつけられ全身から血を噴出させる小柄な身体。それを、巨漢の男はまるで棍棒を振り回すかのように何度も引き上げては地面に叩きつけ始めるのだった。





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