ボディ・スナッチャー

【4】二匹の牝犬

 それから三日間、ろくに休む暇も与えられずに智奈はイキ狂わされ続けた。
 鼻に栓が押し込まれ、口の中にはパイプを咥えさせられると全頭マスクで頭部を覆われる。その上から耳を覆う大型ヘッドフォンが装着されて、身体の自由だけでなく嗅覚や視覚、聴覚までもが奪われたのだ。
 暗闇の中で与えられるのは人工的に作り出されて、直接流しこまれる快楽信号のみ。通常では体験できない激しすぎる刺激に、脳が焼ききれそうだった。
 頭部もなにかの器具で固定されたようで、身悶えもろくにできずに、ただ呻き、身体を震わせ、泣き続ける。
 気を失おうとも自動的にショックが与えられて覚醒させられる。なにかを訴えたくても口腔に押し込まれたパイプで喋ることも出来ない。
 数え切れぬほどの絶頂に次ぐ絶頂。そうして、嫌というほどイクことを心身に刻みこまれた智奈は、マスクを外された時には迷わず哀願していた。

「も、もうイキひゃくない……ゆ、ゆるしひて、くらひゃい」

 勝気な様子は影を潜め、その瞳に浮かぶのは恐れ。ただ、涙ながらに目の前の人物に必死に訴える。
 柱状のゲージの中にX字に拘束されている智奈。その顔を覗き込んでいた佐渡島がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。

「ふーん、イキたくないんだ?」

 涙で濡れる智奈の頬に舌を這わせると、耳元に熱い吐息を吹きかけて佐渡島が囁く。
 恐怖で身体を震わせる智奈は、それに必死で同意する。

「は、はい……ひゃ、ひゃから……」
「じゃぁ、その望みを聞いてあげるわね」

 残忍な笑みを深めた佐渡島は、再び智奈の頭にマスクを被せていく。

「な、なんで……うぐえぇッ」
「ふふ、安心していいわよ、今度は絶対にイカせてあげないから」

 戸惑いの言葉を漏らす口へとパイプを押し込み、顔の起伏が浮き出るほど全頭マスクをキツく締め付ける。
 そして再び、快楽信号が智奈の肉体へと流された。
 激しい刺激に悶絶する智奈。だが、すぐに異変に気付くことになった。
 今度はどんなに激しい刺激を受けようとも、あと一歩というところで絶頂に達する事がないのだ。

「うぐぐッ!?」
「ちゃんとモニタリングしているから、どこまですれば絶頂せずにすむのかわかるのよ。ふふ、凄いでしょう?」

 ヘッドフォンから聞こえる佐渡島の言葉に、智奈は絶句する。

(い、いやよッ、こ、こんなの耐えられないッ)

 必死に声を張り上げ、ガチャガチャと拘束している金具を打ち鳴らす。
 だが、拘束された身体は自由にならず、マスクの下で僅かな呻き声をあげるだけだった。
 そんな智奈の必死な姿に、佐渡島は瞳を潤ませてウットリとした表情を浮かべる。

「うぅーッ! うぐーッ!!」
「ふふふ、そんな元気があるなら、まだ大丈夫ね。それじゃぁ、また三日したら聞いてあげるから、ちゃんと次の望みを考えておくのよ」

 その言葉を最後に、ヘッドフォンから佐渡島の声が途絶える。
 再び静寂に包まれ、絶望に涙を流す智奈であったが、その理性も快楽信号によって吹き飛んでいく。
 だが、昇りつめようとも肉悦はあと一歩で踏みとどまる。心身を焦がす切なさに、涙を流し絶叫を上げる。

(い、いやッ……こ、今度こそ壊されちゃうッ)

 狂おしいほどの絶頂への渇望に襲われ続け、狂ったように呻き声を上げ続ける智奈。
 だが、助けの手が差し出される事はなく、寸止め状態のまま延々とも思える時間だけが過ぎていく。
 そうして再びマスクを外された時には、智奈の瞳から光は消え、その心は完全に折られていたのだった。



「んん、上手になったわね」

 佐渡島はワインを口にしながら、自分の秘部を舐める新たな牝犬たちの仕上がりに満足げな笑みを浮かべた。
 一人掛けのソファに座る佐渡島の股間に顔を埋め、旨そうに舌を動かしているのは智奈であった。
 折りたたまれて黒革製の袋で覆われた四肢で器用に四つん這いで立ち、ボディスーツの胸元に空いた穴からこぼれ出た豊乳をユサユサと揺らしては乳首のリングピアスを光らせる。
 肉厚の首輪をはめて、アナルから生えた尻尾を振りながら張りのある尻肉を揺する姿は、まさに発情した雌犬で、ご褒美欲しさに全頭マスクで覆われた頭部をせわしなく動かしては奉仕に没頭していた。
 そんな智奈の背後には、同じく拘束を施された優奈がいた。目の前の姉の秘裂へと舌を這わし、ピチャピチャと淫らな水音をたてさせているのだ。

「優奈、早く智奈をイカせないと、またお仕置きよ」
「んんンッ、うふッ、あぁン」
「あ、あぁッ、ダ、ダメ……優奈ぁぁッ」

 優奈が肉芽を貫くリングピアスを咥え、勢いよく引っ張る。その刺激に仰け反り、淫らな喘ぎ声を上げる智奈。
 佐渡島はその頭部を掴んで股間へと引き戻すと、すぐに奉仕を再開するよう促す。

「智奈も、私より先にイッたら……わかってるわよね」
「は、はひ……うぅン」
「ふふふ、今回はどちらがお仕置きを受けてくれるのかしらね……あぁン、楽しみだわ」

 二人は佐渡島の言葉にビクッと肩を震わせると、一心不乱に相手を追い落とそうと奮起する。かつて仲の良かった姉妹が争う姿に、佐渡島は目を細める。
 その視線がサイドテーブルへと向けられた。そこには一枚の写真が置かれているのだが、まだ友人として付き合っていた頃の若き日の緋川 由奈と佐渡島 百合子の姿が写っていた。
 才能への嫉妬、同性愛としての恋焦れと渇望、そして異性にとられる焦りと絶望、かつて親友に感じた様々な感情が昨日のように思い出される。

「ふふ、貴女には結局、逃げられちゃったわね。でもね、この二人に貴女の分まで満足させてもらうから、もういいわ」

 手にしたグラスを傾け、写真に映る由奈の笑顔へと深紅の液体を垂らしていく。
 徐々に赤く染まっていく写真を見下ろしながら、佐渡島は嗜虐欲に染まった笑みを浮かべるのだった。

―― This story is the end. ――