催淫染脳支配
【6】 繰り返される人体実験
潤の処女が親友である莉乃によって奪われる光景を、ずっと観ている者がいた。
その者によって浦木家には数多くの監視カメラが設置されて、常に莉乃の行動は事細かに記録されているのだった。
今も天井にあるカメラのレンズが、黒光りするペニスバンドを装着した莉乃の姿を捉えていた。
男性の性器をリアルに造形したディルドーは表面に浮き上がった血管まで忠実に再現している。それを股間から生やした少女の姿は実に背徳的であった。
その上、普段は上品で淑やかな令嬢といった雰囲気からは想像もできない残忍な笑みを浮かべているのだ。
親友を心配して訪れた潤もこんな事が待ち構えているとは夢にも思わなかっただろう。拘束されて手足の自由を奪われては自慢の空手も使えない。
異物に膣壁を抉られる苦痛に勝ち気な美貌を歪めて涙で頬を濡らしてしまう。それを莉乃は舌で舐めとると嬉々として腰を降り続けるのだった。
「ふむ、ほぼ予想通りに行動してくれましたね。やはり秘めた願望を満たしてやるのは有効な手段のようですね」
そう呟いたのは戸陰であった。目の前の画面に映る陰惨たる光景にも、まるで実験用のモルモットを観察しているかのように眉ひとつ動かさない。
淡々と私見をボイスレコーダーに記録していく姿は感情表現が希薄な故にまるでロボットのように不気味にみえてしまう。
だが、一見して無表情に見える戸陰だが、これでも自らの研究成果に大いに満足しているのだった。
「まだ、感情が暴走する傾向がありますが、それはおいおい改善できるでしょう。ならば、そろそろ次の課題に取りかかるべきでしょうね」
脳に関する研究を長年続けてきた戸陰は、才能はあったが周囲とのトラブルが絶えなかった。問題を起こしては様々な研究施設を渡り歩いていた。
そんな彼だが、ある時、国のある研究機関にスカウトされた。
彼が案内されたの外界から厳重に隔離された研究施設だった。そこでは様々な分野の研究者が密かに集められており、人工的な人類の進化を目指すという名目で研究がなされていた。
最新鋭の機材が揃えられ、潤沢な開発資金が自由に使える環境だった。だが、なによりも戸陰が気に入ったのは細かい規則や口煩い上司がいないことだった。
機関と契約を結んだ戸陰は、脳へのアプローチによって潜在能力の引き出すプロジェクトを任されるとすぐに研究に没頭していった。
そうして、数年を経て遂に脳のリミッターを解除する機器の開発に成功したのだった。解放者の意味を込めて『リリーサー』と名付けられたそれは、本来眠っている人間の潜在能力を解放するという目的を果たしていた。
――だが、高すぎる能力には代償があった。
飛躍しすぎる能力に被験者の心身が耐えきれないのだ。
超人のような運動性能に肉体は簡単に限界をむかえてしまい、筋肉は裂け、骨が砕けてしまう。
五感に関しても同様だった。飛躍した知覚能力によって膨大な量の情報が脳に雪崩れこんでくる。それに被験者の精神が耐えきれないのだ。
徐々に精神が疲弊し、不安定になった被験者は徐々に狂いだす。感情の起伏が激しくなり、ついには奇行に走り出す者もでた。そのまま放置すれば廃人になる危険すらあったのだ。
戸陰は、その問題点を克服しようと無理な実験を繰り返し、何人もの優秀な人材を再起不能へと追い込んでいた。
それにプロジェクトに参加していた女性スタッフが耐えられなくなっていた。密かに上層部に中止を訴えたのだが、本来ならそれが通るような場所ではなかった。だが、なぜか彼のプロジェクトは突然の凍結を言い渡されたのだった。
もちろん戸陰はそれを不服として、上層部に掛け合った。だが、決定は覆らずにプロジェクトは解散とってしまったのだった。
それでも戸陰は諦めることもなく、ひとりで淡々と改良を続けた。
被験者には彼のプロジェクトを中止に追い込んだ女性スタッフを使い、昼夜を忘れて実験を繰り返した。
その結果の副産物として、廃人寸前となった被験者に対してリリーサーによる洗脳が可能であることを発見したのだった。
(心身が耐えられないというなら、耐えられるようにつくり変えれば良いだけさ……それがダメでも、いくらでも改善の方法はある。科学の発展には障害はつきものだ。研究の有効性を私の手で実証してみせれば良いだけのことさ)
戸陰は科学者としては有能な部類に入る人材ではあったが、倫理観が大きく欠落した人物であった。
女性スタッフすらも人体実験で廃人に追い込んだ彼は、自らの研究資料と機材をもって施設から姿を消した。
そうして、身分を偽りカウンセラーとなった戸陰は女学園に潜り込んだのだった。
(女学園は実験するには実によい場所だね)
施設での研究データを解析した結果、素材には感受性が豊かな十代の少女が最適だとわかっていた。
それを元に実験を続けた結果、トラウマを刺激して未熟な心を弱らせる事で脳への書き換えを容易になった。それに加え、不安定になる精神を被験者の明るい未来への願望に結びつけることで崩壊を抑え込むことができるところまで漕ぎ着けていた。
実験をする上でもカウンセラーという立場は実に便利だった。ひとり、ひとりの心の闇を掘り起こし、秘めた願いを探りだせる。そうして、何人もの女生徒で成果をあげていた。
催眠暗示を併用することで高すぎる肉体能力を抑制し、分泌される脳内麻薬で精神への負担も軽減できていた。
ただ、脳内物質も過度に分泌されれば悪影響もでる。その結果、被験者は快楽に溺れやすい傾向がでていた。より刺激を認めてエスカレートしていくのを、どう対処するかが今後の課題であった。
(ひとり、ふたりなら何とかなりますが……)
ここにきてサンプル数を増やしたのが裏目にでていた。目の届かぬ者が繁華街で男を漁りだしたのだ。
このあたりでは有名な女学園の制服姿でホテルに入るものだから流石に噂になりはじめ、先日の職員会議にも議題にあがってしまっていた。
そして、今夜、有志による見回りを実施することになっていたのだ。
(そろそろ抜根的な対策を考えねばなりませんね……さて、もう時間ですね)
長年愛用している銀の懐中時計で時刻を確認した戸陰は、名残惜しげにノートパソコンを閉じるとドアを開いて車から降りた。
パーキングエリアに停められた銀のアストンマーチンが彼の愛車だった。そのサイドミラーで身なりを確認すると悠然と歩き出す。
目の前には繁華街が広がり、同僚の教師たちと待ち合わせをしている喫茶店まですぐの距離であった。
予定の時間通りに到着すると店の中へと入ると店内の様子から目的の席が最奥にあるのをすぐに理解した。
店中の男性たちの視線が集まる先、そこに紫鳳 真矢が座っていたからだった。
(やはり、この女は別格ですね)
白のブラウスにネイビーのパンツスーツという服装で、スラリとした長い脚の彼女にはよく似合う。ジャケットで隠しきれない豊かな胸の膨らみに男たちの熱い視線が注がれていた。
それでいて背中まである黒髪をアップにまとめ、キリリとした眼差しで同僚の教職と会話する姿は理知的で、有能な社長秘書と言われても納得しそうだ。
普段は女性を実験材料としかみていない戸陰であったが、真矢に関しては特別だった。
(自信にあふれ冷静沈着なこの女が、動揺し屈服する姿を見てみたい……)
そんな歪んだ欲求が湧いてくるのだ。実験の手段として何人もの女生徒のトラウマを掘り起こし、廃人寸前に追い込んでは秘めた欲望を引き出してきた。そうした行為が戸陰に昏い喜びを感じさせ、真矢に対する嗜虐欲を抱かせていたのだった。
(被験者の対象を大人にするのに、ちょうど良いかもしれないですね)
目の前の美女を次の被験者とすることを決めた戸陰は、珍しく心を昂らせていた。
そんな彼も実験の影響を受けて徐々に秘めた欲望をエスカレートさせているのだが、自分では気付けていないのだった。
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