強者の定義 狙われた教壇のヴィーナス

【4】 暴君が支配する地下監獄

 下着姿にされた上、拘束具で後ろ手に戒められた瑠華は、頭にすっぽりと布袋を被せられると屈強な2人の男たちに左右からガッシリと掴まれ、半分引きずられるようにして、時計塔から連れ出された。
 そして、校舎の影にひっそりと停めてあった黒塗りのワゴン車の中へと載せ上げられた。
 
「――ぐッ」

 男たちは後部シートの外された床の上に瑠華を荒々しく放り込むと、首輪から伸びる鎖を床に埋め込まれたU字フックへと繋いだ。

「しかし、見れば見るほどスゲーボディだよなぁ。見てみろよ、この胸なんで手に収まらねぇぜッ」

 作業をしていた男のひとりが、我慢できなくなったのか瑠華の乳房をムンズと鷲掴みにすると、荒々しく揉み出した。

「うぐーッ!!」

 瑠華は激しく呻き、その手を振り払おうと、激しく身体を揺らすのだが、そうすると、彼女の豊満な乳房が重たげに揺れ、かえって男の嗜虐心を刺激した。
 その光景に、男はゴクリと生唾を飲み込み、ハァハァと興奮したように息を荒らげる。

「おいおい、その辺にしておけ。坊ちゃんが触る前に、イタズラしたのがバレでもしたら、マジでその腕を切り落とされるぞッ」
「わ、わかってるって! くそーッ、早く、俺らにも出番が回ってこねぇかなぁ」

 嗜める同僚の言葉に、男は名残惜しそうに手を引くと、バンっと音を立て後部ドアを閉じる。
 ワゴン車の窓には、濃いスモーク処理が施され、瑠華が捕らわれている事を車外から窺い知る事が出来ないようになっていた。
 男たちがそれぞれ前席に乗り込むと、ワゴン車は静かに動き出し、人知れず校門を抜けると、黒塗りの車体を闇夜に紛れさせるようにして郊外へと走り去っていくのだった。



 ワゴン車が郊外に向けて走り続けるとフロントガラスから見える景色は徐々に緑が多くなり、小一時間もすると周囲はすっかり山々に囲まれた人気の少ない土地になっていた。
 そんな場所でワゴン車は脇道に逸れると、薄暗い木々の間をドンドンと進んでいく。
 すると突然、ライトの光の中に、鉄柵の大きなゲートが目の前に現れた。
 脇には『私有地につき立ち入り禁止』の立札が立ち、ゲートの両脇には高い塀が延々と続いており、その塀の上に備え付けられた監視カメラが、停止したワゴン車の搭乗者を確認すると、ゲートがガラガラと重たげな音を立てながら横に開いていった。
 目の前に通り抜けるに十分な隙間が開いたのを確認すると、ワゴン車は再び動き出し、ゲートを潜り抜け敷地内へと進んでいく。
 鬱蒼と茂った木々の間をしばらく進むと、突然、目の前が開け、広大な芝生の生え揃えられた庭園が広がり、その先に、ちょっとした規模の近代的な建物が建っていた。
 そこが、猩々緋 将尊が父親から与えられた別邸だった。
 ワゴン車は、3階建ての建物まで真っ直ぐ向かうと、ポッカリと地面に口を開けた地下駐車場の入口へと潜っていく。
 30台は駐車できる広い地下駐車場には、同様のワゴン車だけでなく、将尊が普段、通学に使用しているリムジンや、各種高級車がズラリと並んでいた。
 瑠華を乗せたワゴン車は、その間を走り抜け、一番奥のスペースに静かに停車すると、ドアが開けて降り立った男たちは、手馴れた様子で後部ドアを開けて、床のU字フックから首輪の鎖を外した瑠華を車外へと引きずり下ろす。

「――ぐぅッ!!」

 痛みに文句をいっているのか、被せられた布袋の下で短く呻く瑠華に男たちは苦笑いを浮かべると、再び左右からガッシリと彼女を掴み、地下駐車場の最奥にある大きな鉄扉まで連行していく。

――ガッコン……

 扉の上に設置されたカメラが彼らを確認すると、大きな扉のロックが外され、静かに左右に開かれていった。
 まるで銀行の金庫のように肉厚で重そうなその扉は、彼らが内部に入るのを確認すると、今度はゆっくりと閉じられていく。

――ガガーンッ

 大きな音を響かせ、鉄扉が背後で閉じられるのを確認すると、男たちは瑠華の頭に被せてあった黒布の袋を取り去った。

「う……うぅ……」

 暗闇から突然解放され、瑠華は眩しそうに目をしかめるが、次第に目が明るさに慣れると、彼女はすぐに周囲の様子を観察した。
 瑠華たちがいるのは、5メートル四方の空間だった。背後には、大きな観音開きの鉄の扉がシッカリ閉じられ退路を絶っており、まるで大規模シェルターの扉のようなソレは、人力で開けるのは困難そうであった。
 目の前の床では、肉厚の鉄蓋がゆっくりとせり上がり始め、その下に隠れていた地下への階段が姿を現すところだった。
 
 
 
 そこは、かつて冷戦時代に地下シェルターとして作られた施設だった。
 起こりうる核戦争に備え、厳重なシールドにより放射能を弾き、長期間、外の世界から遮断されても生活できる空間の確保が目的だった施設であったが、今は猩々緋 将尊の歪んだ醜悪な欲望を満たす為の監獄として作り替えられていた。
 放射能を弾くべく備え付けられた肉厚の扉は、攫った女たちが逃げ出せぬように閉じ込める役目を果たし、携帯電話の電波も届かぬ地下施設を完全に外界から遮断する。
 それによって内部で行われる様々な陰惨な行為が外に漏れる事もなく、連れ込まれた女たちは、将尊の好きなだけ閉じ込められ、嬲れ続けられるのであった。

 猩々緋 将尊は、気に入った女性を手当たり次第監禁し、調教するような異常性欲者であった。
 幼少の頃より都合の悪い事は、父親が次々と権力や財力で揉み消してくれるに従い、それが当たり前の事だと思い込むようになっていた。
 だから、欲望のままに初めて女を犯した時も問題にならなかったし、より欲望を満たす為に行為がドンドンとエスカレートしていっても誰も咎める者はいなかった。
 それどころか、父親も同じような事を繰り返しているのを知るにいたり、完全にタガが外れた。
 自分は選ばれた人間であり、強者である。望めば何でも手に入り、その為の財力も権力も持っており、誰も自分を止めることなどできない。
 次第に肥大化していく欲望と尊大さは留まることを知らなかった。
 配下に自分の欲望を忠実に実行する私兵を囲い、気に入った女を攫っては、牝奴隷と称し、欲望を満たす肉玩具のように扱った。
 そうして、散々弄んだ女に飽きれば、部下に与え勝手に処理させ、次の女へと手を出す、そんな事をここ数年繰り返していた。
 だが、ここ最近は自分の欲求を満たせるレベルの女がなかなか見つからず、ウンザリ気味の将尊であったのだが、気まぐれで転校した先で出会った女教師の美しさに圧倒された。
 それが、天羽 瑠華だった。
 そして、新たな欲望を満たす為に、将尊は部下たちに彼女を攫わせたのだった。



「うぅ……」

 目の前でポッカリと口を開ける薄暗い地下シェルターへの階段に、瑠華は異様な気配を感じ、知らず知らずのうちに後ろに下がっていた。
 そんな彼女の様子を見て、男たちは口元に下卑た笑いを浮かべる。

「おら、行くぞッ」

――ジャラッ……

 彼女の首輪から伸びた鎖を握った男が、グイっと鎖を引く。
 短い鎖で繋がれた足枷を嵌められた瑠華は、踏ん張ることができずに、上体を前のめりの引っ張られてしまい、慌てて前へと足を踏み出す。

「先生よ、これから施設の中を案内するぜ。アンタは、これからここで暮らすんだからな」
「――ぐッ」

 男は瑠華の鎖を引き階段を降り始める。
 瑠華は、鎖で首輪を引かれるたびに、鎖付き足枷で歩幅を制限された素足で、前に倒れ込まないよう必死に踏ん張りながら、男たちによって引き立てられていった。

ジャラ……ジャラ……ジャラ……

 首輪を引かれ足を踏み出すたびに、足枷の鎖が擦れた金属音を放つ。それが、瑠華に虜囚の身である事を嫌が上でもわからせ、屈辱的な気持ちにさせた。
 瑠華はこれまでの人生で、自分がこんな風にまるで家畜のように扱われ、引き立てられる事になろうなど、ただの一度も想像した事がなかった。
 あまりの屈辱と怒りに、顔が真っ赤になっていく。
 だが、強さに自信のある彼女でも、拘束具で後ろ手で激しく戒められ、両足首の鎖によって歩幅を制限されていては、いくら合気道が得意でも為す術がなかった。

(それに……彼らが素直に琴里ちゃんを開放したかを確認できていないし……)

 そうして、これから我が身に起こるであろう事を想像すると、あまりの絶望的状況に心が折れそうになる。
 だけど、それとは別に、こんな卑劣な罠を仕掛けてきた猩々緋に対し、フツフツと怒りが湧いてきていた。

(どんな事をしても……絶対にここから逃げ出して、猩々緋の悪事を暴いてやるわッ)

 瑠華は、そう強く心に誓うのだった。




 黒ツナギの男たちに首輪の鎖を引かれ、施設内へと引き立てられる瑠華の姿を、各所に備え付けられたカメラが、ジッと捉えていた。


―― ホリゾンブルーの下着姿にさせれ、更にアームバインダーで後ろ手に拘束され…… ――

―― 美貌の下半分を黒革の口枷で覆われて、言葉を封じられ…… ――

―― 足枷をジャラジャラと音を鳴らす短い鎖で、走る事すら奪われ…… ――

―― まともにやれば簡単に打ち倒せる男たちに奴隷として扱われ、鋲付きの肉厚の首輪に繋がれた鎖を引かれ、引き立てられていく…… ――


 毅然とした聖職者から雌奴隷へと貶められた彼女の姿を、猩々緋 将尊は最下層にある私室に備えつけられた大型モニターに映し出し、興奮した様子で見入っていた。

「うぉぉッ、来た来た! 俺の瑠華がやっと来たぞッ!!」

 ウヒヒヒッと気味の悪い笑みを浮かべながら、涎を垂らさんばかりに激しく興奮し、はしゃいでいた。
 画面内の瑠華は、施設内を引き立てられ、最下層へと移送されていくところだった。

 この地下シェルターは、将尊が自分で気に入った女を監禁し調教する施設として改造しており、彼が勝手に付けたランクに従い、よりランクの高い女ほど深い階層の獄に繋がれていた。
 特に、瑠華のような特A級の女ともなると、彼の私室がある最下層の特別調教室に移送される。
 そこには女を辱める為のあらゆる拘束具、器具、マシンが完備されているのだった。

「どうやって瑠華を汚してやろうか……ウヒヒッ、想像するだけで涎が止まんねぇ」

 興奮しすぎた将尊は、ソファの上でジッとしてはおられず、広い室内をウロウロしだす。
 その背後にある大型モニターには、男たちによって特別調教室へと連れ込まれる瑠華の姿が映し出されているのであった。





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