虜囚将校[2] ―猛る武人の国の女性将校の苦難―
【1】氷の大地の地下牢獄
南極大陸の奥地、南極点にほど近い位置に小規模な観測基地があった。
冬季となりマイナス四十度を下まわる吹雪の中、ドーム状の建物に複数の倉庫からなる施設が確認できるだろう。
一般に公開されている情報では国連の観測施設となっているのだが、それはダミーだ。その地下には極秘裏に建造されている地下施設があった。
それを指揮しているのは、世界の流通を掌握しているクロスフィールド財団だ。五層にも及ぶ広大な地下空間には様々な施設が建ち並び、そこで国際色豊かな人員たちが業務についていた。
一応、国連による施設という名目もあり、加盟する主だった各国から人員が派遣されている。日本帝国から駐在武官として派遣された海軍少佐の皇 綾乃(すめらぎ あやの)も、そのひとりであった。
帝国将校用の漆黒の軍服を身にまとった彼女は、艶やかな黒い長髪を靡かせいて颯爽とこの地へと降り立った。その息を呑むような美貌とは裏腹に猛々しい性格の持ち主であり、着任してすぐに指導するべき財団の兵たちを打ちのめして、その実力と存在を知らしめていた。
彼女が赴任して一ヶ月ほど経過するが、その姿は執務室にはない。体調不良による長期療養となって自室に籠っているのだ。
――だが、その情報は事実とは違った……
同じくロシアから派遣されているヴェロニカ=イリイーニシュナ=ポルトワ少佐の奸計によって、綾乃は囚われの身になっていたのだ。
自室にいるはずの彼女が人知れずに監禁されているのは各国のオフィスがある三層と指令部などの重要設備のある四層の間、現在は使われていない区画だ。拡張工事を行っていた際の名残で、今は使用されていない区画だ。
いまだに拡張を続けているこの施設には、こうした使用されていない区画が無数に点在しており、ヴェロニカはそのひとつを密かに利用していたのだ。
――気に入った女性をすべて手に入れる
それがレズビアンであり嗜虐趣味のあるヴェロニカの欲望であり目的であった。
彼女は己の欲望に忠実に従って女性を監禁、調教して自分好みに躾ているのだ。その一方で、狡猾な手口によって隠蔽工作をおこない、決して事実を露見させない周到さも持ち合わせている。
だから、今回の綾乃の件も周囲では誰も不審に思っていなかった。それには、綾乃の副官である風見 比奈子(かざみ ひなこ)中尉が大きく関わっていたのだ。
その比奈子の姿が、ロシアの駐留武官に割り振られた建物にあった。
治外法権が半ば認められた場所であり、本来ならば他国の者が易々と入れる場所ではない。それなのに彼女を咎める者はおらず、何事もなかったかのように職員たちはすれ違っていくのだ。
彼女は密かに増設された隠しエレベーターに単身で乗り込むと、ごく一部の者しか知りえないパスコードを入力して降下を開始する。
メガネのレンズ越しに見える切れ長の目が印象的なクールな容姿。身体は鍛えられて無駄なく引き締められ、それでいて士官服越しでもわかるグラマラスなボディの持ち主だ。
エレベーターに乗るのは彼女ひとりだが、背筋を伸ばした美しい立ち姿を崩そうとはしない。まるで彫像もように不動の姿勢を維持しているのだ。そのことからも彼女の厳格で実直な性格が垣間見れるだろう。
そんな軍人の鏡のような彼女がなぜヴェロニカに協力しているかというと、彼女自身もヴェロニカに拐われて激しい調教を受けていたのだ。
綾乃が赴任する以前に同じくして捕らえられた比奈子は、一ヶ月に及ぶ調教の末に完全に屈服させられていた。今ではヴェロニカの忠実な駒として彼女の欲望を満たすための手助けをしているのだ。
『ヴィルラ』
ロシア語で別荘を意味する言葉で、そこは呼ばれていた。
エレベーターを降りると、建材が剥き出しの通路が現れる。計画的に建てられた階層表面とは異なり、複雑に入り組んだ通路はまるで迷路のようだ。案内板もなければ目印となるものもない。
点在するライトで照らされる薄暗い通路は優雅な別荘というよりは地下牢獄がお似合いだろう。隠語としての意味合いもあるが、ヴェロニカになりに皮肉を込めたジョークでもあるのだろう。
ガツガツと靴音を立てながら、その暗い通路を歩いていると、比奈子の脳裏には自らが調教のされた当時の記憶が甦ってくる。
――キシキシと軋む鎖に全裸で吊られ、あらゆる抵抗を封じられた比奈子には、もう相手を睨みつけるしかできなかった。
――常人なら精神に支障をきたすような強力な媚薬を躊躇なく投与してきたヴェロニカは、比奈子の性感帯を隅々まで調べあげていった。
――その上、感度を極限まで上げるように肉体を改造していくと、女同士での快楽や被虐の肉悦を徹底的に心身に刻み込んできたのだ。
――寝る間も与えられず、快楽と苦痛による調教は続いた。
――強靭な精神と肉体をもつ比奈子も、徐々に心身をすり減らされて確実に壊されていった。
――それでも強靭な精神力で対抗しようとする比奈子だが、抗えば抗うほどヴェロニカを喜ばせる結果となってしまう。
――ヴェロニカの調教は苛烈を極め、常人なら一週間ともたないだろう。それを一ヶ月近くも耐えたのだから比奈子は称賛されるべきだろう。だが、その結果についには発狂する寸前まで追い込まれてしまったのだ。
――いや、正確にはすでに心は壊されていたのだろう。意識を取り戻した彼女は、自らが無意識に抑え込んでいた負の欲望の存在を認識していた。それを受け入れた比奈子はヴェロニカが与える快楽を享受し、彼女の軍門に下ったのだ。
普段は周囲から堅物と思われている比奈子だが、不意にスイッチが入るとそのうちに秘めた淫らな欲望に支配されてしまう。
今も調教時の記憶が蘇ったことで、比奈子の感情は高ぶり、もうひとりの彼女が姿を現していた。
普段の比奈子を知る者がみたら、その顔に浮かぶ淫靡な表情に驚くことだろう。
さらに驚くことに軍服に手を挿し入れて、自慰行為にまで及ぶのだ。
周囲には人の気配がないとはいえ、通路の真ん中でひとり乳房をまさぐり、秘処へと指を埋没させていく。
肉体は早くも反応を示して乳首は硬く尖りだしており、白手袋をはめた指が摘まめば熱い吐息をこぼし、かき回す肉壺からは淫らな水音が響きだしていた。
「あぁ、いい……」
堪えきれずに漏らした声が、なんと熱く淫猥なことか。一度こぼしたら、もう止まらない。人目もはばからずに大きな淫鳴きを通路に響かせて、欲望を貪る獣のように淫らに燃え上がるのだ。
すぐに一度目の絶頂はやってきた。ブルブルと背を震わせて、顎を突きだして舌から唾液を垂らす。
顔を真っ赤にしてハァハァと息を乱して絶頂の余韻に浸るのだが、その手は動きを止めようとしない。まるで誰かに操られるかのように両手は愛撫を繰り返して、再び比奈子を絶頂へと追いやっていくのだ。
二度、三度と絶頂に達しても、まだ満足はしない。痴呆のように意識を飛ばしながらも、両手は比奈子を責め続けるのだった。
比奈子が目的の部屋へと到着したのは随分と時間が経過してからだった。冷静さを取り戻したかのようにみえる彼女だが、その柔肌は薄らとピンク色に染まり上気した名残を残しており、微かに牝の残り香を漂わせている。
室内には誰もいないのを確認すると、流石に少しホッとしたようだ。そこは改修した区画を監視するように機材を設置した管制室になっていた。
ここで区画内の空調や各部屋の様子などを集中管理できるようになっており、目の前に設置された大型モニターには、分割表示された各部屋の様子が映し出されている。
そこに目的の映像を見つめて、比奈子の固く閉じられた唇が綻びをみせた。
「やってるわね」
目的の部屋の映像を見つけて拡大表示するように操作する。大画面で映し出されたのはヴェロニカの調教を受ける綾乃の姿だった。
壁一面に埋め込まれた巨大な鏡の前で、綾乃は立たされていた。
その身にまとうのは誇りある日本帝国海軍の将校服だ。金の装飾を施された漆黒の軍服に白手袋、さらに勲章まで備えた正装の姿だ。だが、本来はあるはずのスカートだけが脱がされている。露出した股間を覆うのは黒革のパンツだ。ハイレグ仕様だが、後ろから見るとお尻をぽっかりと切り抜かれたOパックタイプになっている。
キリリとした凛々しい姿であるが故に、下半身を露出しているのが滑稽だった。その上、両手を頭の後ろにまわし、スラリとした美脚をガニ股にしたポーズを取っているのだ。
その姿が彼女が望んだものでないのは、恥辱に耳まで赤らめ、グッと唇を噛んで耐えていることからうかがえる。四肢も拘束具によって動きが制限されており、細首にまかれた首輪と手枷、足首と太ももの枷がそれぞれ鎖で繋がれているのだ。
耳をすませば、わずかなモーターの駆動音が聴こえてくる。黒革のパンツの内側に備えられたバイブレーターが秘処を貫き、膣内で唸りをあげて蠢いていた。
それによって溢れだした愛液が、黒革のパンツから溢れて太ももを濡らしていく。
その姿を、正面にある巨大な鏡で見るように強要されているのだった。
――ビシッ
空を裂いて、鞭がが床を叩く。綾乃の背後に立つ軍服姿のヴェロニカが鞭を振るったのだ。少しでも姿勢を崩したり、視線を逸らすと容赦なく鞭が振り下ろされた。
さらに綾乃を苦しめるものがあった。床に転がるガラス製の浣腸器によって腸内にゼリー状の浣腸液が注入されているのだ。
腸内で温められると硬化する性質があり、それを下腹部が膨れるまでタップリと注ぎ込まれてしまっていた。
「うぅぅぅ……」
秘処に挿入されたバイブレーターによって犯される中、腸がゴロゴロと鳴って激しい便意にさらされていた。
腹痛によって美貌は歪み、吹き出た汗がポタポタと落ちていく。その足元にはバケツが置かれているのが見える。そこに排泄するように命じられているのだ。
だが、プライドの高い綾乃がそれを容易に実行できるはずもなく、こうして無謀だとわかりつつも必死に便意に耐えているのだった。
――ジャラリ……
少し身動ぎするたびに首輪と手枷を繋ぐ金具や太ももの開脚棒が音を立てる。その途端、突きだしたヒップへと鞭が振り下ろされて体勢を矯正される。
人前で排泄する気恥ずかしさに一時間近くもそうした状態が続いており、尻肉にはすでに幾本もの鞭痕が刻まれていた。
だが、プルプルと身体を震わせる発作的な痙攣が定期的に起きていた。その間隔は徐々に狭まり、便意の限界が迫っているのは明白だ。
「うくぅ……あッ、あぁ……」
固形ゼリーで満たされた直腸を薄皮を隔ててバイブの振動が襲う。それがより彼女の便意を促していく。
――そうして、ついに恐れていた瞬間がやってきた。
内側から盛り上げられた肛門からわずかに青みかかった透明な固まりが顔をだす。
「あッ、あぁぁ、ダメよぉぉッ」
悲痛の叫びとともに、それは腸液をまとってメリメリと出てくると足元のバケツへと落ちていった。
半透明の疑似便は途切れることもなく続き、長いどくろを巻いていく。
「あら、これは見事なものね」
バケツを覗きこんで笑みを浮かべるヴェロニカに指摘されるまでもなく、その排泄物は綾乃にも鏡で確認できた。
バケツの中で山となる排泄物に、恥辱のあまり彼女を睨みつける目尻には涙が浮かび、肩を震わせてしまう。
そうして、すべての排泄を終えるとようやく体勢を崩すのを許された。
がっくりと座り込んでしまう綾乃だが、すぐに次の調教がはじまる。
ヴェロニカも同じく下半身を裸になると股間をさらして椅子に座る。その足元に膝をつかされた綾乃は、彼女の秘処へと舌で奉仕するように強要されるのだった。
首輪に繋がれたリードを引かれて、ゆっくりと突きだされた舌先がヴェロニカの秘裂へと這わされて、ゆっくりと舐めあげていった。
次第にその奉仕には熱がこもり出して、ピチャピチャと淫らな音をたてはじめる。
そうして奉仕に没頭していく綾乃の股間では、革パンツに内蔵されたバイブレーターに加えて、排泄したばかりの菊門にアナルバイブが突き入れてあるのだ。
体液を撒き散らして稼働する二本のバイブレーターに翻弄され、頭の後ろで組まされた白手袋の手がギュッと握られる。
切なげに腰を振りながらも一心不乱に奉仕していく綾乃は、そうやって隷属の悦楽を確実に覚え込まされていくのだった。
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