虜囚将校[2] ―猛る武人の国の女性将校の苦難―
【3】奴隷の証である共振リング
休憩のために管制室へと戻ってきたヴェロニカを、ティータイムの支度を整えた比奈子が出迎えた。
彼女の来訪を予測していたのだろう。驚くこともなく併設した応接セットへと足を向けると、さも当たり前のように、彼女の引く椅子へと悠然と座ってみせる。
目の前にセットされた白磁器のカップに注がれていく濃いめの紅茶。立ち上る湯気とともに茶葉から抽出された芳醇な香りが周囲に広がり、鼻孔をくすぐる。
差し出された瓶からベリー系のジャムをスプーンですくい取ると、ヴェロニカはひと舐めして艶やかな深紅色の液体を口にふくんでみせる。その時に垣間見せる幸せそうな表情を比奈子はたまらなく好きだった。
その姿を密かに盗み見て堪能した比奈子は、懐からケースを取り出してテーブルの上へと置く。それは指輪の収納ケースのようであった。そして、実際に内部には白銀のリングが格納されていた。
「工房に依頼していた品が出来上がりました」
差し出されたリングを手に取ってヴェロニカは確認していく。照明の光を浴びて、リングは冷たい光を放つ。
よく観察すれば、それが指用にしては小さいのにすぐ気付くだろう。
内側には複数の突起が出ており、表面には『раб』と刻まれている。それはロシア語で奴隷(ラブ)の意味をしめす言葉であった。
「ありがとう、いつも通りよい出来だわ」
それは特定の周波数の音に共鳴する特殊合金で造られたものだった。可聴域を外れた超音波によって振動し、波形を操作することで繊細な強弱にも対応することができる。
ヴェロニカはそれを反抗的な奴隷の陰核に取り付けているのだ。
包皮を剥かれた肉芽に装着されると、内側の突起が締めつけて簡単には外れないようになっている。電池を必要としない為に超音波さえ向けていれば半永久的に稼働させることも可能で、音もしないために隠密性にも優れているヴェロニカお気に入りのアイテムなのだ。
もちろん、綾乃にもこれを装着しようというつもりなのだ。
その綾乃の姿は大画面に映し出されていた。急所という急所を責められて悶絶する彼女は、抗うこともできずに絶頂につぐ絶頂に、頭部をうち振るって悲鳴のような喘ぎをあげていた。
拘束ベルトを引き千切らんばかりの激しい身悶えだが、幾人もの女性たちを調教してきた拘束椅子はギチギチと音を立てるだけで自由になどさせない。
疲れ知らずの淫具によって責められ続けて、綾乃の叫び声は途切れることはなかった。
その無惨な姿と呻き声をBGMにして美味しそうに紅茶を飲んでいたヴェロニカが、ふいに比奈子を見つめた。
「そろそろ、ヒナが提案してくれていたアレをやろうと思うのだけど」
「ほ、本当ですかッ!?」
綾乃の調教に関して、かねてから比奈子に調教に加わりたいと嘆願されていたのだ。
比奈子の助力によって捕獲は成功し、その後の巧妙なアリバイ工作によって周囲にも不審に思われてもいない。
流石に拐われてから日数が経過して綾乃も救出部隊がいっこうに来ないのを不審に思いはじめていた。それに対しても、信頼している副官であり恋人でもある比奈子を人質に仕立てることで対応できた。
ギリギリで保たれていた理性も、それで維持させることができて反抗も抑えることができている。
ヴェロニカ好みの面白い趣向として提案されていたプランを、比奈子による貢献を評価して許可したのだ。
それに比奈子自身が綾乃の調教に加わることで彼女の心には大きなダメージを与えられるだろう。
「タイミングは私が判断するけど、詳細は貴女にお任せするわ、期待しているわよ」
「はい、もちろんですッ! お任せくださいッ!!」
身を震わせる歓喜する比奈子を眺めながらヴェロニカは紅茶を口にすると目を細める。
比奈子が浮かべる笑みが次第に邪悪なものへと変化していくのだが、当人は気づいていないのだろう。
彼女が抱える昏い欲望を正確に把握しているヴェロニカは、提案がその欲望を満たすためのものであると見透かしていた。
(どのみち、私が楽しめるのは変わらないからね。思う存分に恋人を可愛がってちょうだいね)
用事を終えて上機嫌で退出していく比奈子を見送り、ヴェロニカも比奈子の裏切りに気づいた綾乃の姿を想像して嗜虐欲を高ぶらせていた。
彼女もまた己の欲望を満たすことに忠実な人間であり、その欲情を思うままぶつけるために綾乃が待つ部屋へと戻っていくのだった。
扉を開けると凄まじい呻き声がヴェロニカを出迎えた。
拘束椅子に開脚した姿で固定されている綾乃は、酷い有り様だった。
乱れ髪からみせる美貌は、ボールギャグを噛まされた口元からは涎の糸をたらし、見開かれた目から涙を、鼻から鼻水を垂れ流して美貌を濡れ汚していた。
ミシミシと椅子自体を軋ませる勢いで腰を突き上げては、絶頂とともに潮を吹き出している。
スキニー腺液と尿の混合液は、キレイな曲線を描いて床を濡らしていくのだが、すでにそうやって、何度も濡らされた床には水溜まりができていた。
「いい具合に出来上がってるわね」
連続絶頂で放置されていた綾乃の目は、すでに焦点があっていないようだ。脇に立ったヴェロニカの存在にも気付く余裕もなく、バイブレーターが与える刺激に翻弄されてしまっているのだ。
激しい肉悦によって理性が吹き飛ばされている状態に、ヴェロニカはニッと笑みを浮かべると、手にしたコントローラーで淫具を停止させる。
その途端、全身を体液でずぶ濡れにした綾乃は、糸の切れた人形のようにクッタリと力尽きた。だが、身体はビクンビクンと激しく痙攣を繰り返してカチャカチャと枷を繋ぐ鎖を鳴らしていた。
その無様な姿を見下ろしてヴェロニカもついに興奮を抑えられなくなった。
着ていた軍服を脱ぎ捨てると、その下から現れたのは雪のようなに白い裸体を包むの革のボンデージ衣装だ。
剥き出しの乳房のカップ下から腰を覆うコルセット。そこから垂れるベルトで吊られるロングブーツに、二の腕から指先まではロンググローブが装着されている。
そして秘部を覆うのはゴム製のパンツだ。股間からは細身の体格に似合わないほど太いディルドゥが生えている。男性の男根をリアルに模したもので浮き出た血管まで再現しており、その生々しいモノが西洋人形のように冷たい美貌の女性から生えているギャップが背徳感をより強めていた。
「今度はこれで可愛がってあげるわね」
猛々しくそそり勃つディルドゥに潤滑用のローションをまぶして、ゆっくりと近づいていく。
開脚アームに両脚を固定されている綾乃に逃れる術はない。それ以前に放心したままの彼女には、これから起こることを理解する余裕すらないのだ。
普段は氷のような冷静さを維持しているヴェロニカにしては珍しいことだが、秘唇に挿し込まれていたバイブレーターを引き抜く動作が荒々しい。
提案した比奈子自身が想像してた以上に、プランは主を興奮させるのに成功していたのだ。
愛撫の必要もないとばかりに、愛液を溢れだす秘唇へと腰のディルドゥが突き立てられる。
「――ふぉごぅッ!!」
グジュリと隙間から白濁した愛液を押し出しながら、いきなり深々と挿入する。そのまま、下がりきっていた子宮を突き上げるように根元まで押し込むのだった。
放心していた綾乃が、それで息を吹き替えした。目を見開き、顎をあげて身体を弓反りにさせる。
正気を取り戻した彼女は、目を爛々と輝かせて見下ろすヴェロニカの存在にようやく気づいた。だが、内蔵まで押し上げるような挿入に首を後ろに反らしてしまう。
「おうぅぅ……」
「やって気づいた……わねッ」
「――はうぅぅッ!!」
腰を引いて大きなひと突きで綾乃に状況をわからせる。次は、ゆっくりと腰を振りだして緩やかなピストン運動を開始する。
バイブレーターによってほぐされた秘肉は、極太のディルドゥも難なく受け入れていた。それどころか、出し入れを繰り返されると、それに呼応するように絡みつくように締めつけてくるのだ。
日頃の厳しい鍛練の成果もあって、その締めつけは素晴らしいものだった。並みの男なら数分ともたずに果ててしまうだろう。
だが、レズの行為ではその心配はない。体力と気持ちが続く限り絡み合うことが可能なのだ。
それが愛ある行為なら良いことだが、無理矢理に犯されるとなると話は違ってくる。延々と相手の欲望のままに犯され続けるのだ。
そして、悲しいことだが綾乃の身体は連日の調教によって、ヴェロニカに犯されることに馴致させられていた。愛用のディルドゥを挿入されると、心ではどんなに拒絶しようとも肉体は嬉々として受け入れてしまうのだ。
そうでなくてもバイブレーターによる連続絶頂で心身は消耗させられていた。もはや、抗うだけの精神力も残っていない。
「ひ、ひゃめぁ、ひゃめへぇッ」
(や、やめぇ、やめてぇッ)
体力も限界で、つい弱音が口から出てきたとしても責められはしないだろう。涙で潤んだ瞳で荒々しく犯してくるロシアの女性将校を見上げてしまうのだ。
鋭い眼光を放っていた瞳からは、常に宿っていた強い光が消えていた。その弱々しい眼差しを向けられて、嗜虐者であるヴェロニカはより興奮してしまう。
「あぁ、いいわね。普段は反抗的な貴女がみせる弱者の眼差し……とっても興奮するわよ」
「うぅぅ……」
露出したたわわな双乳へと指を埋めながら、ヴェロニカは歓喜をあげていた。
対する綾乃は見下ろされる冷たい視線から逃れるように、悔しげに美貌を歪めて視線を外してしまう。
「あぁ、貴女にはプレゼントがあったんだわ、気に入ってくれると良いのだけどね」
眼前に差し出されたのは、しなやかな指に摘ままれた白金のリングだった。
キラリとライトの光を反射する白銀のリング。それを綾乃は訝しげに見つめて目を細める。
指輪のようにも見えるリングだが、その大きさと内側に並ぶ突起によって指用でないのがわかるのだろう。
突起も片方からは滑らかな曲線を描くが、片方からは引っ掛かるように反っているのだ。
だが、それ以上のことは聡明な彼女でも判断できないのだ。
「ふふふ、これがなんなのかわからないようね」
すでに綾乃の肉芽は勃起して包皮から顔を出していた。吸引器を併用した肉体改造で、小指ほどの大きさまで充血するようになっているのだ。
ヴェロニカは見せつけるようにリングの内側に潤滑剤の代わりの媚薬クリームが塗りつける。その行き先を目で追っていた綾乃は、リングが肉芽へと装着されようしているのに気がつく。
「やっと気づいた? これはねぇ、こうやって使うのよ」
用途に気づいた時には遅かった。肉芽を咥え込むように穴へと通されて装着されていたのだ。
ほぼ隙間なくリングに入り込み、先端が穴の反対から顔をだす。根元まで押し込まれたリングは、包皮を押さえ込んでさらに完全に肉芽を露出させていた。
「ひゃ、ひゃにほしへるほ……はぅッ!!」
(な、なにをしてるの……はぅッ!!)
リングは綾乃のために厳密に採寸された上で製造された一品物であった。そのため、穴の大きさも彼女の肉芽を想定したサイズで造られている。
塗られたクリームの滑りで装着は容易だったが、内側の突起の形状もあって抜こうとしても肉を引っ掛けて簡単には抜け落ちないようになっていた。
「ぐッ、くあぁぁぁン」
もっとも敏感な部分がリングが張りつく感覚に、綾乃は悶えさせられてしまう。
その上、潤滑剤の代わりに塗られた媚薬クリームが浸透しはじめると、より充血してしまいリングが食い込んで刺激を送り続けてくるのだ。
「気に入ってくれたようね。でもねぇ、お楽しみはこれからよ」
装着されたリングに感触と秘部を貫くディルドゥに身悶えする綾乃を、ヴェロニカは楽しげに見下ろしながら手にしたコントローラーを操作していく。
室内に設置されたスピーカーから人間では聞き取れない波長の音が発せられた。
それは綾乃の肉芽に装着されたリングを共鳴振動させる超音波だった。
「あッ、あぁぁぁぁンッ」
スピーカーから発せられる超音波に呼応して、リングが微細な振動を繰り返す。
それはモーター稼働のような激しさはないが、肉体でも敏感な箇所に与える振動としては十分な威力を発揮した。
「あぁン、あふぅぅッ」
「どう? 気持ちいいでしょう?」
催淫クリームに含まれる麻薬成分が効果を発揮しはじめると、綾乃からは苦痛の気配が収まり、快楽だけが増幅されていった。
リングが与えてくる刺激に、綾乃は瞳を激しく潤ませてトロンと蕩けた表情をしだす。
開脚アームに載せられた両脚が内側に折られ、プルプルと震えると、膣壁が挿入されたままのディルドゥをギュウギュウと激しく締め上げてくるのだ。
「あふぅぅッ」
「どう? 気持ちいいご褒美でしょう? でもねぇ、逆に罰を与えることもできるわよ」
「――ひッ!?」
コントローラーが操作されると一転して装着されたリングは激しい暴れはじめる。
優雅なクラシックからパンク曲での変わったような変化で、リングは肉芽を振りまわすように激しく振動する。
だが、複雑な機構を持たないが故に一切の音を立てないのだ。
「ふふふッ、さぁて、それじゃぁ今日からはこのリングの味をたっぷりと覚え込んでもらうわね」
激しく悶えさせられる綾乃の姿に気を良くしたヴェロニカも、そう告げると再び腰を使いはじめるのだった。
Copyright(c) 2022 KUON All rights reserved.