気高き心は砕かれて、欲望の昏き水底へと沈められる'

【4】汚される純血

 拿捕されたルイザが連れて来られたのは、旧市街地区にある娼館の下もある薄暗い地下空間だった。
 石を組まれて作られた地下道と地下水路からなる空間は百年以上も前に造られたものだ。
 窓もなく、光源となるものは所々で焚かれる松明やランタンの灯りのみだ。
 そのため物陰には深い闇がひそみ、時折カサカサと得体のしれないものが蠢いているようにみえる。
 後ろ手に手錠をかけられ、頭部に黒い布袋をかぶせられたルイザは、その中を両腕を掴まれてズルズルと石畳を引きずられていた。
 ここはかつて王国だった時代に、反逆者を閉じ込めていた地下牢獄だった。
 点在する鉄扉の向こうは牢獄となっており、罪人は壁に鎖で繋がれて死ぬまで投獄されていたのだ。
 今はロドリゲスが改修して隣接する地下水路を使って隣国から麻薬を運び込む一方で、都市部の裕福層をひとめにつかずに招き入れては娼婦相手の欲望にまみれた一夜を提供している。
 そうやって、莫大な資金を調達してきた彼の秘密の全て闇がここにはあった。
 耳をすませば、その金持ちの変態客の嗜虐にまみれた欲望によって、哀れな悲鳴をあげる女の声が所々から聴こえてくる。

「おら、お前はここだッ」
「――ぐぅッ!?」

 ルイザもそんな部屋の中へと連れ込まれると、すみに設置されたベッドの上に突き倒される。
 布袋で視界が塞がれているうちに押さえ込まれ、手錠を外された。
 ルイザは抵抗を試みるが視界が塞がれている状態では有効な手が打てない。
 両腕が頭上へと引き上げられてガチャリと手錠がかけられる。

「ん――ッ」
「このぉ、大人しくしやがれッ」
「――ぐふぅッ」

 激しく暴れるルイザの腹部に烈な一撃を腹部に喰らわされた。
 おもわずくの字に身体を曲げる彼女の両脚を男たちは掴んで、それぞれベッドの脚へと繋ぎとめてしまうのだった。
 ちょうど人の字にベッドに縛り付けられた格好だった。
 拘束から逃れようと激しく暴れようとも、ガチャガチャッと鎖を鳴らすだけで緩む気配もない。

「うぅぅ……」

 いつしか彼女を連行していた男たちは退室していた。
 入れ替わるように入ってきたのはロドリゲスだった。
 ベッドの腕に括りつけられたルイザの姿に残忍な笑みを浮かべると、その上へと圧し掛かっていった。
 
「んッ!? んん――ッ!!」

 頭に布袋を被せられているルイザは、誰かが襲い掛かってきたことに嫌悪の呻きを上げた。
 逃亡生活の間に格闘術を叩きこまれていた彼女だが、手足を拘束されていれば何の役にも立たない。
 ビリビリッと衣服が引きちぎられて、これから自分が犯される事実に恐怖させられていた。
 さらに手足を激しく動かして、襲撃者を払いのけようとする。
 だが、腹部にドカリと乗られてしまうと、もう身動きすらままならない。
 その間にシャツはボロ布と化してブラジャーもむしり取られてしまう。
 Dカップはある彼女の豊乳が姿をあらわすと、その迫力ある存在感にロドリゲスは好色の笑み浮かべる。

「ちょっと肉付きが良すぎるかと思ったが、これはこれで楽しめそうだな」
「んぐ――ッ」

 男のゴツゴツとした手が肉丘をムンズと鷲掴みにしてくる。
 荒々しく揉み立てられて、ルイザは激しく呻き声をあげて嫌々と頭を振る。
 その反応も嗜虐者には凌辱を引き立てるスパイスでしかない。
 両手で荒々しく揉まれて、双乳には朱い指痕が刻まれていった。
 
(どうして? なんでなの?)
 
 女を売り物にして成りあがっただけあってロドリゲスの愛撫は荒々しくみえても女のツボを押さえたものだった。
 嫌悪する心とは裏腹に、ルイザの肉体は徐々に反応をしめすのだ。

「どうだ悔しいか? どんなに嫌がろうが、こうやって可愛がってやれば女の身体は反応しちまうんだよなぁ」
「んーッ、むぐぅぅぅッ」

 ロドリゲスの指がルイザの股間へと触れてきた。
 先ほどまでの荒々しさから一転してソフトなタッチだ。布越しでに指が秘裂をなぞってくるのだ。

「んッ、んん……」
「どうした? 声が甘くなってきてるぞ?」

 そんなことはないと否定しなかった。だが、愛撫を受けて秘唇は充血して、その奥がジュクリと蜜を出し始めたのを自覚していたのだ。
 せめて声は出すまいと猿轡を噛みしめるのだが、ロドリゲスの指が陰核にも触れてくるともうダメだった。
 脊髄を貫き、脳を直撃する電流が流れた。闇に包まれているはずの視界が白く染まり、全身が電流に打たれたかのように痙攣してしまう。

「ん? なんだ? もしかして、自慰もろくにしたことがないのか……まさかと思ったが生娘とはなぁ」

 はじめて軽い絶頂を経験させられて、ルイザはクタリと力尽きてしまう。
 抵抗がなくなったのを確認するとロドリゲスは一度、ベッドを降りて衣服を脱ぎ捨てはじめた。
 歳をとり若干は緩んできた肉体だが、それでもよく引き締まっている方だろう。それよりも特筆すべきはその股間で反り返る剛直だった。
 臍につかんばかり肉棒は太さも長さも人並み以上で、数々の女の淫液によって黒く焼かれていた。
 大きく傘を開いた亀頭は先端からトロトロと溢れ出る粘液によって、すでに濡れ光っている。

「どれ、大事な商売道具になるからな、じっくりと拝見させてもらうぞ」

 茫然自失しているルイザの足枷を外すと、ズボンのベルトを緩めて一気に脱がしにかかる。
 それに彼女が気づいた時にはもう、カモシカのような脚から下着ごとズボンが抜き去られていた後だった。

「さぁ、この娘はどんな品をお持ちかな?」

 両脚を抑えつけられて大きく開脚させられる。すでに隠す布地もない股間へ、ロドリゲスの熱い視線が注がれた。

「ほぅ、綺麗なピンク色だな。形も悪くないな。やはり、しっかりと濡れているな」
「う、うぅぅ……」

 異性に秘部を見られる恥ずかしさに頬が熱くなってしまう。
 押さえつける手を跳ねのけて蹴りを放ってやりたいところだが、先ほどの絶頂で足腰に力が入らなかった。
 無造作に秘唇を押し広げられて中を確認されるのに、ろくが抵抗ができないのだ。
 悔しさに目尻に涙が浮かんでしまう。
 だが、彼女が悲しみに浸っている暇などなかった。

「どーれ、それじゃいただくとするか」

 秘唇に熱く硬いものが押し付けられていた。
 それがなんなのか理解するよりも先に、それが一気に秘部へと押し入ってきたのだ。

「――ッ!!」

 ズンっという勢いとともに狭い膣洞を切り開いていく剛直。
 それは、そのまま処女膜を突き破り、一気に奥まで侵略を果たす。
 声にならない悲鳴をルイザは猿轡の下であげさせられていた。

「はははッ、これでお前も大人の女に仲間入りだな」

 愉快そうに腰を振り始めたロドリゲスの嘲笑が頭上から降り注いでくる。
 だが、荒々しく膣壁を抉られ続けて、ルイザはそれどころではなかった。

「むぐぅ、ぐぅぅぅぅッ」

 あまりの痛さに涙の珠が次々と溢れ出して頬を濡らした。
 ロドリゲスには女を労わる気があるはずもなく、己の快楽のために腰を振り続ける。
 その一方で、ルイザの肉体を吟味して品定めをしているのだった。

(格闘技で鍛えているからか良い締め付けだ、並みの男ならすぐに果てそうだな。それに初心な反応のわりに肉体は快楽に素直に反応するようだ、変態相手の奴隷娼婦としても良い値がつけられそうだな)

 逃亡中に一人前の戦士となるべく自らの意思で厳しい戦闘訓練を受けてきたルイザは、痛みに対して耐性がついていた。
 処女を奪われ、肉玩具のように荒々しく扱われながらも、次第に肉体は快楽を得るようになっていたのだ。
 膣全体が剛直を包むように引き締まり、奥へと誘うように蠢きだしていた。それが男には無上の肉悦を与えるのだ。

「おぉッ、こりゃ、スゲェな……うっ、この俺が我慢できんとはなぁ」

 変化しだしたルイザの肉体。それが生み出す肉悦に百戦錬磨のロドリゲスもタジタジになる。

「なら、そろそろ俺のを子宮に注ぎ込んでやるよ」
「――んッ、んんぅッ」

 ロドリゲスが呻きをあげて射精をはじめていた。
 両手を頭上に拘束されて、男に圧し掛かられていれば逃げることもできない。
 剛直から噴き出した熱い精液が次々と子宮に注ぎ込まれるのを感じて、ルイザは涙を流しながら悲痛な叫びをあげるのだった。


 精を注ぎ終えたロドリゲスは、剛直を抜き去るとベッドの淵に腰かけた。
 上手そうにタバコを吹かしながら、ルイザの頭から布袋を取り去る。
 悲しみに打ちひしがれる女の顔、つまらなさそう見下ろしている。

「まぁ、道具は予想以上によかったぞ」

 ロドリゲスとしたら賞賛の言葉なのだろうが、犯された女からすれたまったものではない。
 ルイザの顔が怒りに染まり、キッと睨みつけてくる。
 その反応に、ロドリゲスは怒るどころか奇妙なことに喜んでみせた。

「ははッ、いいねぇ。これで心が折れるようなら処分も考えたが、これならまだまだ愉しめそうだな」

 途端に上機嫌になったロドリゲスは、ルイザの口元から猿轡を外してやるとニタリと不気味に笑う。

「あぁ、やっぱり父親にそっくりな目をしてやがるな……俺を覚えているか? 幼子だった妹の方は残念ながら覚えていないようだったがな」
「――アリシア!? アリシアはどうしているのッ」
「安心しろ、今のところは丁重に扱っているさ」

 ロドリゲスの言葉にルイザはハッとして口をつぐむ。「今のところは」という含みで自分になにかをさせようとしていると察したのだ。

「……なにが望みなの?」
「ははッ、話が早くて助かるな……その頭の回転の良さも父親譲りか?」
「うるさい、早く言いなさいよッ」

 仇である男から父の話など聞きたくなかった。殺意を隠そうともせずに、ギッとロドリゲスを睨み付ける。
 それに気分を害した様子もなく、ロドリゲスは煙草の煙を吐き出すと話を続ける。

「要求は三つだ。ひとつはお前の仲間に関する情報だ。首魁であるお前を失っても忌々しいことに、まだ仕事の邪魔をする気だ。お蔭で余計な出費がかさんで、襲撃のときに皆殺しにしておくべきだったと後悔しているところだ」
「……へぇ、ご愁傷さま」
「ふたつめは、お前には損害を補填してもらいたい。と言っても、まぁ、やることは簡単だ。ここで娼婦として稼いでくれればいいさ。損害額を稼いでくれれば解放もしてやるよ……まぁ、被害はかなりの額になっているがな」
「そ、そんなのできるわけが……」
「まぁ、待てッ。俺も悪魔ではないからな、もし、俺のいうことを聞くのであれば妹の安全は保証してやろう。なんなら病気の治療も受けさせてやるぞ。医者に見せたら今なら完治も可能だというからなぁ」

 妹にまともな治療を受けさせて病を完治させてやりたいのはルイザの長年の願いだった。
 だが、そのために仲間を売る気もなく、拒絶の意志を示す。

「ふむ、ここまで譲歩したというのに強情なやつめ……なら、ひとつめは保留してやろう。娼婦として働くと誓うのなら、お前だけが汚れるだけで妹の病は完治するぞ」
「私だけが汚されるだけ……」
「そうだ、それとも己を可愛さに妹が元気になれるチャンスを棒に振るのか?」

 それでも十分に無茶な要求であったが、そこは組織のボスとして十年近くも政財界のクセ者たちとやりとりをしてきた経験がものをいう。
 言葉巧みにルイザを自分の都合のよいように誘導していくのだ。
 聡明なルイザとはいえ二十歳そこいらの娘でしかない。
 海千山千の経験をもつ男によって、次第に思考を袋小路に追いやられて、それしか選択肢がないように思わされていくのだ。
 ここで重要なのは強要をしないことだ。あくまで自分で選択したという事実が、後々に重い枷となってルイザの心を繋ぎ止めるのだ。

「ふぅ、ここまで譲歩してもダメならしかたない。妹の処遇を考え直そうか」
「――ッ、ま、まってッ……まって下さい」

 そう言われて立ち去られようとすれば、彼女は引き止めるしかない。
 もとより彼女には選択肢などないのだ。
 それでも言葉にするには勇気がいる。心揺れる瞳で相手を見上げ、次の言葉を放とうと力を込める。
 だが、そこから先は喉が固まってしまったかのように声がでないのだ。

「なんだ、なんでもないなら行くぞ」

 懇願する瞳を無視して、そのまま背を向けて出口へと歩もうとする。
 その背後に対して、ルイザが懸命に振り絞りだした言葉が投げ掛けられるのだった。

「……します…………娼婦になりますから……どうか、妹に治療を……」

 血の涙を流さんばかりに恥辱に身を震わせ、ルイザは言葉を紡んでいく。
 それを聞き終えて、ロドリゲスの口元がはじめて綻びをみせた。

「そうか、そうか、ついに決心してくれたか」
「はい、ですので……」
「わかっている。よく決心してくれた……安心しろ、妹にはこの国一番の医師をつけて完治させてやる」

 強面に笑顔を浮かべて上機嫌なロドリゲスに、宣言してしまった内容に不安を感じつつもルイザもホッとさせられる。

「なら、早速、娼婦のためのレッスンを受けてもらおうか、レッスン中も特別に賃金も払ってやる。初々しいのも悪くないが、すぐに飽きられるからな」

 趣味の悪いスーツを身に着けたロドリゲスは、そう告げると部屋を出ていこうとする。

「ま、まってッ」
「なんだ、まだなんかあるのか?」
「三つ目はなんなの?」

 ロドリゲスは交渉の条件を言う前に三つあると言ったのだ。だが、ルイザが聞かされているのは二つだけだ。
 そのことをロドリゲスはすっかり失念してたのだろう。言われて気づいたようだ。

「あぁ、三つ目に関してはやっぱりいいわ……それも、どうせすぐにわかることだ」

 それだけ言い残すとロドリゲスは部屋を出て行った。
 今度は拘束はされなかったが部屋の外からはガチャリッと扉が施錠される音が聞こえた。
 天井には監視カメラが備えられていて、こちらに向けられたレンズがジッと監視しているのだった。
 それから逃れるように背を向けると、ルイザは毛布を頭からかぶり、改めて犯された事実に涙するのだった。


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