気高き心は砕かれて、欲望の昏き水底へと沈められる
【6】転げ落ちていく日々
娼婦として初めての客を取った次の日から、ルイザの生活は過密スケジュールとなった。
朝に目覚めるとエヴァによる陰湿な虐めも混ぜたレッスンが始められる。
今度は監視役の男たちを使っての実演も混ぜて何本もの男根から精を搾り取らされる。
そうして、昼からは客の相手だ。午後、夕方、夜と休む間もなく客の相手が早朝まで続く。
疲れきって動けないルイザを運ぶ連中も部屋までくると全員で彼女を犯していくのだ。
時折、レッスンの終わりにロドリゲスが来ることがあり、賃金とアリシアの近況を教えてくれるのだ。
日々、元気になって明るい笑顔を浮かべるようになった妹の姿に涙ぐみながら、渡される賃金を大事そうにするのだ。
それに客との話から外の様子もわずかばかりでも知ることができた。
仲間たちはルイザが捕らえられた後も活動を続け、組織を裏をかいて翻弄させているのだ。
(皆が頑張っている……それに、あの人も協力してくれているわ)
組織の裏をかくには事前に相手の情報を知ることが必須だった。
そのためにロドリゲスの推測通りに、ルイザが知るある人物が組織へと身分を偽って潜入しているのだ。
正体が露見すれば命のない危険な任務だ。その為、仲間たちは情報提供者の存在は知っていても正体までは知らないのだ。
ルイザが口を噤んでいる限り、その身は安全だと知っていたからこそ、彼女の胸にはまだ希望があった。
――だが、そこに彼女らの盲点があった……
ロドリゲスによって麻薬中毒者が溢れかえった街では、住民らの協力を得るのも難しくなっていた。
以前のように自由に行動はできず、密告を恐れて常にアジトを移動する。
それでも情報提供者との連絡が取れる方法を、ロドリゲスはワイズマン大尉に追わせたのだ。
そうして、メッセージアプリを使っての連絡であると絞り込めたら、偽の情報を流したのだ。
――行方不明だったルイザが移送される
そのルートと日時が記されたメッセージによって、今度は少年たちが踊らされることになる。
罠に気づいた本物が急いで忠告のメッセージを送るものの遅かった。
本物と偽物のメッセージが飛び交い、どれが正しい情報かわからなくなったのだ。
もし彼らにも情報提供者の正体をあかしてあれば直接、警告に現れることができただろう。
だが、今となってはお互いの正体と居場所を知らせるわけにもいかない。
追い込まれた少年らに、ルイザ奪還という甘い誘惑を振り切ることもできなかったのだ。
「さぁ、これで片翼がもがれたよ、お嬢さん」
待ち構えていたワイズマンの部隊によって少年らは無慈悲にも包囲殲滅させられたのだった。
路面に並べられた蜂の巣にされら死体たち。血まみれの少年少女たちの姿を写真で見せられて、ルイザは嗚咽していた。
しかも、それを持ってきた客が協力的だった住民の代表者だったのだ。
「どうして、ペドロさん……」
「前々から思ってたが、成長したお前さんをこうして犯したかったんだよ」
面倒見のよいオジさんとばかり思っていたペドロが、仮面を脱ぎ捨てて欲望に歪めた顔でルイザを押し倒すとその乳房にしゃぶりついてくる。
唾液を肌に塗り込んで、嫌でも反応してしまう乳首を甘噛みしてくる。
「くぅ……あぁ……ダメよ」
「そもそも俺は実はガキは嫌いでな、ギャングと揉められて迷惑だったんだよ」
「そんな……嘘よ」
「本当さ、金が手に入るっていうんで協力してたが、もぅ潮時だろうって組織に情報を売ったのは俺さ」
少年たちがメッセージで情報提供者とやり取りしているのも、アジトによく出入りしていた彼は少年らから聞き出していたのだ。
それを教えた褒美にと、ロドリゲスからルイザを一晩与えられる恩賞を大金とともに得ていたのだった。
それは顔見知りであった住人の裏切りを知ることで、仲間の死のダメージをより効果的に与えるのが目的だった。
それは、ロドリゲスの目論見どおりの効果を発揮していた。
「ゆ、許さない……」
「お、おぅ、その拳をどうするよ……なぁ、妹が大事なんだろう?」
悔しさに噛み締めた唇から血を流しながら、ルイザは硬く握りしめていた拳から力を拔く。
「ふぅ、ヒヤリとさせやがって……まぁ、生きてるだけマシだと思うことだな。それにしても、この数ヶ月どんだけ男たちのチ×ポを咥えこんだんだよ。すっかり女の顔になって娼婦が板についてやがるな」
興奮を高ぶらせながら全裸になったペドロだが、ルイザはただ放心したように見上げてくるだけだった。
それもロドリゲスには織り込み済みだったのだろう。前もってペドロに渡してある物があったのだ。
それは茶色にアンプルに詰められた液体だった。あの性感ローションに含まれていた麻薬の原液だった。
パキリとアンプルの首をへし折り、中身の液体を注射器で吸い上げていく。
妙に手慣れた手つきで、それを放心しているルイザに腕に注入していく。
「うッ……なにを……」
「なぁに、すぐに何も考えなくてよくなるさ」
「あぁぁ、この感覚は……あの時の……いや、もっと凄いわ」
身体の真に熱も持ったようだった。肌は熱病にかかったかのように赤味を増して、股間から愛液が滴りはじめたのを感じる。
激しい疼きとともに意識が飛びそうであった。
「あんまり打つと本当に廃人になるぐらい強烈らしいぜ。その分、効果もお墨付きだぜ」
「あ、あぁぁぁ……」
目の前で勃起している男根からエルザ目が離せなくなっていた。
もはや、それが欲しくてたまらず、男が誰で何を言っているかも理解できない。
ただ、身体の奥から湧き上がる肉悦への渇望を満たしたいだけなのだ。
「へッ、もうトリップしてやがる。さぁて、存分に可愛がってやるからな、この売女がッ」
激しく罵りながらルイザを組み伏せて、その秘部を欲望のままに犯していくのだった。
その日を境にしてルイザの心は折れていた。
ただでさえ、ハードスケジュールな娼婦生活なのに、客は途切れぬルイザを妬み娼婦らの陰湿な虐めはエスカレートしていった。
監視役の男たちも隙あらば犯してくる日々で、娼館の中で完全に孤立させられているのだった。
心の限界を迎えたルイザは、ペドロが残していったアンプルに手を出してしまう。
本来なら薄めても強烈な効果がある薬剤の原液だ。理性を吹き飛ばして淫らな獣と化してくれる。
――薬が効いている間は嫌なことを忘れられる……
そのために手を出したルイザは、次第にアンプルの薬なしではいられなくなった。
もはや妹のこともお金のことも忘れて、ただ肉欲に溺れる日々を過ごすのだ。
そうして、ペドロが残していったアンプルが尽きれば、客を通じて麻薬を欲するようになってしまうのだ。
貯めていた金が尽きれば、麻薬を得るために身体を売りはじめてしまう。
「チッ、ここまでかよ……まぁ、愉しめた方だな。最後の仕上げだ」
女の扱いに長けた配下の男をルイザのもとに客として通わせたのだ。
麻薬を土産に金払いのよい上客と思い込ませて、甘い言葉で誘惑させるのだ。
そうして、女殺しのテクニックで骨抜きにして、たっぷりと焦らしてやれば、肉欲に溺れた今のルイザは思いのままだった。
ついには情報提供していた裏切り者の正体を吐かすのだった。
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