淫獣捜査スピンオフ 双極奴隷たちの調教クルージング2
【2】攻守交代するふたり
三日後、再び、ナナとシオが対峙したのは、新たに用意された調教室であった。
シオの要望で船底に近い下層ブロックにある調教室が用意された。前回との違いは窓からの景色が見えず、やや圧迫感を感じる所だろう。
設備的にはナナがシオを責めた時に使用した部屋と大差はないように見える。
その他での違いは設置されているカメラの数だろう。
すでに隠すという行為自体を放棄して、さまざまな角度から冷たい光を放つレンズが向けられているのだ。
「いまさら隠す意味もないからな。それから、これを渡しておこう」
立ち会いのために同席した紫堂が、ふたりに手渡してきたのはインカムだった。
どうやら今回はシオによる責めも見てみたいとリクエストしてきた豪田を楽しませる為に、なにか仕掛けをするつもりのようなのだ。
それを理解できれば十分だった。詳しい説明をしない紫堂に対して、ふたりも求めるようなことをしない。
「ナナの時とは少し状況が違うことになるが問題はないな?」
「えぇ、少しぐらいハンデがあった方が良いでしょうしね」
元より主である紫堂の行動に口を挟むつもりもなかった。
それにここで受け入れず、怖気づいたように見えてしまうのも癪なのだ。
「あぁ、ならば大丈夫だな、私もシッカリと嬉しませてもらうよ」
余裕綽々といった様子のナナに、紫堂はそう告げると退室していったのだった。
「さて、ひとまず裸にでもなりましょうか?」
「……そうね」
二人きりとなり、ナナから提案する形で服を脱ぎ始めた。
この時の彼女は真紅のドレス姿であった。巻き付いていた赤い布地が肩紐を解いただけでスルリと解けて身体から離れていく。
布地がバラの花びらのように足元に広がり、その中央に裸体となったナナが立っているのだ。
照明の抑えられた室内で、染みひとつない綺麗な肌が輝いて見える。
極端な起伏はないが、流れるようなボディラインがじつに艶めく、水彩画の巨匠による名画のように見惚れさせる曲線に、おもわずため息をもらされる。
衣服を脱ぐ行為すらも素晴らしく演出して殿方を魅了させてみせる。それがナナの流儀なのだ。
(惜しむべきは、目の前にいるのが無表情な相手でリアクションを望めないことでしょうか)
心の中で苦笑いを浮かべながらも、ナナはカメラのレンズに向けて堂々と裸体をさらしてみせる。
そんなナナと対峙するシオもまた衣服を脱いでいく。彼女にしては珍しくストライプ柄のビジネススーツだ。
秘書的なスーツ姿をするナナに対抗してのことかもしれない。上着を脱ぎ、タイトスカートを落とした彼女はすぐに下着姿となったのだ。
ストッキングに紺のブラジャーとシーツ姿だ。そこに薄手のゴム手袋を装着していく。
(おや、珍しい)
ナナがそう思ったのはシオが麻縄を手にしていたからだ。普段のシオは拘束具を多様している印象が強く、麻縄を使っているのを見るのは初めてだったのだ。
そのままナナの背後にまわると腕を手に取り、背後にまわすように促してくる。
ナナの両手は背中で掌を合わせるポーズをとらされた。まるでお祈りをするかのようなポーズのまま麻縄によって縛り上げられていくのだ。
そのまま余った縄尻を乳房の上下へと巻きつけていくの様は実に手慣れたものだ。昨日今日で身につく縄さばきではなかった。
「意外ね、普段は麻縄なんて使わないから、緊縛は出来ないのかと思ってたわ」
「……必要ないから使わないだけ……」
問い掛けに珍しくシオが反応を示していた。視線を交わさず作業する手もとを見たままではあるが、普段は反応に乏しい彼女からしたら驚きに値する反応だろう。
ナナも驚きで目を見開くものの、すぐに笑みを浮かべる。いつもな支配人の手足として無感情に動いている彼女が、少しばかりではあるが人間らしい反応を示したのが嬉しくもあったのだ。
(必要ないから……ならば、今は緊縛する必要があるということね……)
グルグルと巻きつかれた麻縄によって卑猥に肉体が変形させられていくのを感じながら、ナナは自分の瞳が潤んでいくのを感じていた。
いわゆる縄酔いという状態で、縛られて自由を奪われることによって心に潜むマゾのスイッチが入っているのだ。
胸縄で締めつけられた胸元が、徐々に乱れ始めた呼吸によって大きく上下する。すでに白雪のような柔肌も上気してピンク色に染まりはじめていた。
「くッ――うふぅン」
腰に巻かれた麻縄が股間を通り、一気に引き上げられる。秘裂に食い込んでくる縄の感触に、つい甘い声を漏らしてしまう。
そうしてシオによる緊縛は完成していた。両手の合掌縛りに加えて、身体にも菱形状に麻縄がまとわりついていた。その綺麗に整えられた縄目はナナの美しさをさらに引き立てていた。
そんなナナの背後、背中の縄留めに天井から垂らされたロープが繋げられるとゆっくりと引き上げられていく。
「うッ……くふぅ」
身体に巻きつけられた麻縄に体重がかかり、全体の縄がさらに食い込んでくるのだ。
徐々に浮き上がったナナの身体は爪先でどうにか立てる位置でロープが固定される。
だが、そこで終わらずシオは新たな麻縄を手にしていた。
追加の縄も天井のフックを通して垂らすと、それを右太ももに巻き付けていくのだ。
――ギッ……ギシシ……
追加の麻縄が引き上げられるたびに、軋む音を立ててナナの右脚が徐々に引き上げられていく。
そうして、右膝が乳房の脇にくるほどまで引き上げられるとそれも固定される。
すでに下着も身に着けていないナナである。無防備な股間を大きく広げたポーズで、秘部をカメラの前に晒すことになる。
「……縛りがいのある身体」
「うーん、貴女に褒められても、あまり嬉しくないですわね」
「その様子なら、まだ大丈夫そう……ね」
さらに追加の縄を天井のフックから垂らされた。今度は右足首に巻きつけられて引き上げられていった。
引き上げられた足首は胸まで上がり、さらに肩を越えて頭上まで引き上げられた。
「くぅ……」
「……流石ね」
「ふふ、ありがとう……」
自らの体重によって食い込んでくる縄の感触にわずかに眉を寄せながらもナナは不敵に笑ってみせる。
キッチリと縄の揃ったシオの縛りも見事だが、広い関節の可動域と肢体の柔軟さでそそれを受け止めているナナも大したものだろう。
背筋を伸ばしてI字バランスを見せる姿には、バレリーナのような優雅さすら感じさせるからだ。
だが、これは芸術性を魅せる緊縛ではない。相手を屈服させる調教なのだ。
すぐさまシオによる責めが開始されることになる。
背後からまとわりつき、ギュッとナナの身体を抱きしめてきた。
彼女の豊満な乳房がナナの背中で押しつぶされ、黒いゴム素材の手袋に包まれた両手が前にまわされる。縄目から突き出た双乳をムンズとわし掴みにして指を埋めてくるのだった。
その手つきは荒々しいもので、指先を肉丘に埋没させて握りつぶさんばかりの力のいれようだ。
「うッ……くぅ……」
「どうしたの……痛いのも……好きでしょう?」
「それは……相手次第……んんッ……ですわね」
耳元で囁かれる呟きに、眉間に皺を生みながらも不敵な笑みを浮かべて返す。
母乳を絞りだすように根元から握りつぶされ、硬くなりはじめた乳首を爪先で捻りあげられる。
「ぐぅ……はぁ、はぁ、はぁ……くぅぅぅ」
「……やっぱり痛いのも好き……なのね……こんなに濡らしいて……いるわよ」
乳房に朱く指の痕が刻まれ、痛みにおもわず身体を揺すると、股間に食い込まされている麻縄が秘部を責め立ててくる。
そうやって責められ続けて、いつしか溢れ出した愛液が股縄を濡らし、太ももを伝っていくまでになっていたのだ。
漆黒のゴムで覆われた指先でそれをすくい取って眼前に見せつけてくると、嫌がるナナの口に押し込んでくる。
そうやって指先を濡れ汚した愛液を自ら舐め清めるように促してくる。
「んッ……うふぅ……んんッ……」
屈辱的な行為を強要されることでナナの嗜虐欲は刺激されて股間はさらに激しく濡れていた。
それを耳元で囁いて指摘するシオもまた口元に乾いた笑みを浮かべはじめているのだった。
「……こんなに……嬉しいのなら……これは……どうかしら?」
口に押し込まれていたシオの指先が抜かれると、柔肌を伝い下ろされていく。そうして下腹部に到着すると、そこから垂れ下がる股縄を掴んでいた。
「――くふぅぅッ」
グイっと引き上げられた麻縄が秘裂にさらに食い込まされる。麻縄がリングピアスが貫くナナの肉芽を擦りあげていくのだ。
それだけで爪先立った女体がビクン、ビクンと震えていた。
「うッ……くぅぅ……」
「……もう……逝ったの? 早いわね」
「はぁ、はぁ……悪かった……わね」
悪態をつきながらも、ナナは自らの肉体の反応に戸惑いを覚えていた。
本来のナナであれば肉体はおろか精神状態も細かくコントロールすることができるのだ。
今回はカメラの向こうで視聴している豪田らを楽しませるために、もう少し悪態をついて余裕をみせるつもりだった。そうやって徐々にシオを焦らせながら自分は優位に立つように演出しようと目論んでいたのだ。
だから呆気なく達してしまったことは彼女の本意ではなかった。
肉体がいつの間にか異様なほど敏感になっているのだ。
『悪いな、朝食に仕込ませてもらったよ』
その疑問に答えるように耳に差し込んであるインカムから紫堂の声が響いてくる。
どうやら媚薬の類を食事に忍ばせてあったようだ。わずかな違和感にも機敏に感じ取るナナが気づけなかったことから、無味無臭なものであるのだろう。
紫堂は視察先から持ち帰ってきた試薬であることを明かしてみせる。
『遅行性なのも売りなんだが……うん、予定した通りの時間で効果も発揮したな。あぁ、強力だが後遺症はないらしいから安心しろ、一日程度で効果も切れるらしいぞ』
すでに激しい疼きに襲われているナナにとって、その説明はなんの気休めにもならなかった。
肉体はすでに彼女のコントロールを外れて暴走状態になっており、敏感になり過ぎた肌の感覚は吐息を受けただけでゾクゾクと悶えさせられるほどなのだ。
(これが、二十四時間も……)
『ハンデがあっても大丈夫なのだろう? 決められたシナリオにそったショーではつまらんからな』
ナナ自身は伏せていたのだが、彼女の特性を紫堂は見抜いていたようだ。
心身をコントロールできる特性を活かして状況をコントロールしようとしていたナナの目論見を潰すために、わざわざ新型の媚薬まで用意して彼女の食事に仕込んでいたのだ。
(くぅ、やってくれましたわねッ)
紫堂が素直に攻守を交替しただけで満足するはずもなかった。何事も最大限に愉しもうとする男であり、そのために何かしら干渉してくることはナナにも予見できたはずだった。
一応、細心の注意を払っていたつもりの彼女であったが、こうして見事に媚薬を盛られてしまっては油断していたと言われてもしょうがない。
(あぁ、もぅッ!!)
悪態のひとつでもついてやりたいところだが、実際の彼女はそれどころではなかった。
インカム越しに支配人からのアドバイスを受けたシオが本格的に責め始めていたからだ。
「はぅぅッ、あッ、あぁぁぁン」
左手が乳房をこねくり回して、右手が股縄を引き上げて陰核を擦りあげてくる。
そうして首筋に舌を這わしては時折、熱い吐息を耳に吹きかけてくるのだ。
『やはり耳が弱いようじゃな。そこを押さえながら他もしっかり責めてやれッ』
流石に支配人は年季が違う。わずかな反応の違いからナナの弱いところを探り出して、的確な支持をシオに送ってくるのだ。
媚薬により暴走して感度が何倍にも増してしまっている肉体では、それに抗うことはできない。
無様に悶えさせられて、淫らな媚声をあげさせられる。そうして、何度も達してしまうことになる。
「あぁぁぁ、それはダメよぅぅッ」
ブーンと低音を響かせて振動する電動マッサージ器を陰核に押し付けられて、恥も外聞もなくナナは悶え泣かされていた。
「ひっ、ひぃぃぃッ」
ガクガクと腰を揺らし、潮まで吹いてしまうのを止められない。
だが、それでもシオによる責めは止まろうとはしないのだ。
恥も外聞もなく悶え苦しむ姿をさらすナナに、紫堂と並んで視聴していた豪田は腹を揺すって満足げに笑っていた。
「あのクールな美女がここまで見事に狂わされるとはね。その試薬とやらぜひ私にも試させてくれないかね」
「えぇ、試供品としてサンプルをすでにご用意してあります。ですので……」
「あぁ、わかっているとも。例のアナウンサーに番組を持たせる件はすぐに部下に検討させましょう。容姿のレベルも話題性も十分だからメインキャスターとして立たせても、充分に稼ぎだしてくれることでしょう」
「ありがとうございます」
調教ショーを最大限に盛り上げるために演出する傍らで、紫堂はそれを使ってなにやら交渉を有利に進めているのだった。
「しかし……うむ、やはり良い女の悶え苦しむ姿を鑑賞しながらの酒は旨いな」
「えぇ、まったくです」
新たな商談もまとまり満足するふたりはグラスを交わして乾いた笑みを浮かべ合う。
そうして、ナナの咽び泣く姿を堪能しながら美酒を堪能するのだった。
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