螺旋姦獄 奪われた僕の幼馴染み
【3】幼馴染みの異変と忍び寄る悪意
合宿を終えた渚は榧野の車によって自宅に直接帰ってきた。
ひどく疲れた様子で挨拶もそこそこに自室に入りベッドに潜り込んでしまった。
それから体調を崩したらしく、しばらく寝込んでいた。そんな渚の様子に流石に心配になった僕は、彼女の部屋へ行こうと中庭にでる。すると、慌ただしく玄関から出ていく彼女の後ろ姿を見かけた。
迎えにきたらしいスポーツカーに乗り込むと、そのまま走り去っていった。
「今の車を運転していたのは、風祭だったよな……」
合宿で関わってきた榧野とは違い、演劇コーチである風祭への周囲からの評判はよい。
演劇部のヒロイン役である渚とも接点があるから、体調の悪い彼女を心配してわざわざ車を用意して迎えにきてくれたのかもしれない。
(くそ、まただ……どうにも悪い風に感じちまう)
音もなく走り去っていく海外製のEVスポーツカーを見送りながら、モヤモヤとする胸中に眉をひそめてしまう。
それからも度々、風祭の車に乗り込む彼女の姿を見かけたが、これ以上は焼きもちで悪態をつかないように話題に触れないようにした。
それも渚が以前のように僕と接してくれるようになっていたからだ。
「ごめんなさい。ボクが悪かった」
朝食の為に食卓に向かうと、体調を回復したらしい渚が深々と頭を下げてきた。
少しやつれて見えた彼女は、不安げに僕を見つめてくる。
「ボクのために、いろいろ気にしてくれてたのに、意地になってしまって……」
「いやいや、悪いのは僕だよ……その……風祭の話を聞いて……嫉妬しちまった。だから、僕の方が悪い」
「いいや、ボクの方が……」
「はいはい、二人ともそこまでぇ、お互いに謝ったんだからイイじゃない。これまで通りに仲良くすれば良いでしょう」
二人して謝罪合戦になりそうな所を、玲さんが取り持ってくれた。
彼女も僕と渚が仲違いしているのに気を揉んでいたから仲直りしたことに安堵したみたいだった。
両手で僕らを抱えてギュッと抱きしめてくる玲さん。それは子供の頃によく喧嘩して仲裁してくれた時と同じ仕草だった。
「もぅ、痛いよ、お姉ちゃん」
「あはは、ゴメン、ゴメンッ。さぁ、ご飯にしようか」
それからは渚も今まで通りの生活に戻っていた。夏休み中も勢力的に部活に参加していた出かけていく。ヒロイン役の二人は風祭コーチによる個別レッスンも行われるようになったらしく、夜遅くまで練習して彼の車で送り迎えされる日々が続いた。
僕も玲さんも空手部の大会が近いのもあって練習に忙しくって、三人が顔を合わせられるのは朝食と時ぐらいになっていた。それでも元気な渚の笑顔が見えるようになって僕は上機嫌だった。
(この調子なら告白できるかもしれない)
密かに決意を固めていた僕は、部活の休憩中に久々に柳田先輩とバッタリと出くわした。
何気ない立ち話のつもりだったが、そこで気になる話を聞くことになった。
「……その話、本当ですか?」
「あれ、キミは知らなかったのかい? 渚くんは身内の不幸があったとかで結局は合宿に参加しなかったんだよ」
「えッ、でも、アイツは一緒に車に乗って行きましたよ?」
「車で移動している最中に連絡がきて、途中で引き返したらしいんだ。そう風祭コーチがみんなに説明していたよ」
風祭コーチから説明とあって、合宿に参加した全員が残念がりながらもスンナリと納得したらしい。
ヒロイン役を入れての練習には代役を入れて練習には支障がないようにしたらしい。
合宿の練習に参加できなかった埋め合わせに、今は風祭コーチが付き切りで渚と個人レッスンをしているというのだった。
(だけど、身内に不幸なんてあったら玲さんも一緒だよなぁ、そんな話はなかったぞ……)
深刻な顔つきで考え込んだ僕を怪訝そうにみていた柳田先輩は、僕がより詳しい話を尋ねると困った表情を浮かべる。
「すまん、行きの車の中で爆睡してたらしくってな。詳しいことまでは知らないんだよ。そうだ、霞、アイツなら起きてたはずだから、教えてくれるはずだぞ」
そう言うと柳田先輩は練習していた霞先輩をわざわざ呼んできてくれた。その時に事情も話してくれていたらしく、こちらから新たに説明する必要もなかった。
霞先輩は涼し気で落ち着いた雰囲気を漂わせている女性で渚とも玲さんとも違ったタイプの美女だった。
背中まで伸ばした黒髪を靡かせて気品すら漂わせて優雅に歩く姿に”月の女王”と呼ばれる所以を感じさせる。
そんな彼女が僕の前に立つと、ジッと顔を見つめてくる。その視線がなにか目踏みをしているようで、少し嫌な感じがするものだった。
「あの……」
「待ってッ、ここだと人もいるし、落ち着ける場所に移動しましょうか」
僕の返答もまたずに彼女はスタスタと歩き出してしまう。演劇部用に新たに建築された施設には練習用の広い部屋以外も倉庫や小道具を作成する加工室、簡易の宿泊部屋とさまざまな部屋が用意されていた。その中の一つに案内された映像資料室があった。
防音加工が施された室内は演劇に関する映像を観るための部屋のようだ。十畳程度の部屋には大型の画面と複数の席が用意されている。
「ここなら聞き耳をたてている人もいないから安心ね」
僕を椅子に座らせると、モニターを背にして霞先輩は立ってみせる。女優を本気で目指しているらしい彼女は、人に見られることが好きなようだ。
その仕草はつねに相手にどう見えるのか計算しているように感じられて勉強になると渚も言っていた。
将来は女優となるかもしれない美女と窓もない密室でふたりっきり、そんな状況に僕はどうにも落ち着かない気分にさせられる。
「ふーん、アナタが渚のイイ人なのね」
「あ、いや、イイ人だなんて……ただの幼馴染みですよ、霞先輩」
「真夜でいいわよ……で、そのただの幼馴染みが、わざわざ聞きたいこと……たとえば、渚と風祭コーチの親密な関係とかかなぁ?」
なにが可笑しいのか真夜さんはクスクスと笑みをこぼす。その笑いがどうにも不快で少しムッとしてしまう。
「合宿のときに貴女も渚と同じ車に乗ってましたよね? 彼女が帰った時の詳しい経緯を知りたいのですが……」
「えぇ、確かに一緒に後部座席に座ってましたよ。途中で渚に連絡が来て急遽、戻らなきゃっという話になって最寄り駅で降りましたね」
そう状況を説明してくれた彼女からはそれ以上の情報を得ることはできなかった。
車内での状況を聞けるのは残るは榧野だけだが、粗暴でなにかと玲さんとも衝突する人だから僕も苦手としていた。
「ねぇ、渚のことがそんなに心配なの?」
今後のことを思案していた僕に、いつの間にか霞先輩は距離を詰めていた。耳元に口を近づけてそっと囁いてくる。
その声が妙に艶めかしくゾクリとさせられる。彼女の熱い吐息が耳に吹きかけられると、思わず声を上げて飛び退いてしまう。
「な、なにを……」
「うふふ、弱点をみーつけた。アナタは耳が弱いんだね」
耳を押さえて赤面する僕にクスクスと笑っている。その小悪魔的な笑みに僕の動悸はさらに高まってしまう。
(なんだろう、この人が怖い……)
僕も道場で鍛えられているから恐ろしさのは少しは耐性があると思っていた。
だけど目の前の美人な先輩を前にしていると、まるで女郎蜘蛛の巣にでも迷い込んでしまった虫のような絶望的な気分にさせられる。
本能が警笛を鳴らし続けて、体が自然と身構えてしまっていた。
「――プッ、あははッ、ごめんなさい。そんなに驚かせるつもりはなかったんだけど、悪ふざけが過ぎたわ」
それまでの悪女然とした雰囲気から一転して十代の少女らしい屈託のない笑いに変わる。
そのあまりにも激しい代わり映えに、相手が女優を本気で目指しているのを改めて感じさせられた。
「ふぅ、面白かった。お詫びに渚が個人レッスンを受けている所を覗かせてあげようか? そうすればアナタも少しは安心できるでしょう?」
「――ば、場所を知ってるのですか?」
「えぇ、風祭コーチから私だけは聞いているの。ただし、レッスンの邪魔はできないからコッソリと覗き見するだけよ。渚も集中させたいから来訪は秘密にしておいてね」
渚の姿を見かけないと思っていたらレッスン自体を別の場所でおこなっているらしく、最近ではほとんど学園の方には顔を出していないというのだった。
「それじゃぁ。準備ができたら呼ぶから連絡先を好感しよっか」
レッスンはスタジオを借りて行われているらしく、邪魔にならないように配慮するために時間が欲しいとのことだった。
その準備が整ったら改めて連絡すると告げて彼女は立ち去っていった。
ひとり部屋に残された僕はドッと疲れを感じて座り込んでしまう。
「な、なんかわかんなかったけど、危なかった……なんだんだ、あれは……」
霞先輩との会話中、その表情や仕草を無意識に追っている自分がいた。
そして、途中から漂いはじめた妖しい色気におもわず惑わされそうになっていた。
それに抗えたのは日頃の鍛錬の賜物だったのだけど、まるで空手で格上の有段者を相手にしたように精神を激しく消耗していた。
霞先輩から連絡があったのは、それから五日後のことだった。
その日にも僕の方も部活はあったけど仮病で休むと連絡した。
心配する先生の声に罪悪感を受けながら、今日も風祭の車で出かけて行く渚を見送ると後を追うように外出する。
待ち合わせの場所として指定されていたのは郊外にあるビルの前だ。外見はなんの変哲もない六階建ての建物に見える。
遅れてやってきた真夜さんは私服姿だった。普段の落ち着いた雰囲気とは違いスポーツミックスな服装だった。
白を基調としたブラトップに黒のスウェットパンツとスニーカーといういで立ちで、カジュアルなジャケット合わせている。
雑誌モデルの経験があるだけあって着こなしもバッチリだ。布地の合間からみえる括れた細腰には少々目のやり場に困る。
「お待たせッ」
「いえ、約束の時間は今ですから」
「でも、女を待たせないスタイルは、ポイント高いわよ」
深々とかぶっていたキャップを脱いで収められていた黒髪がフワリと舞う。その途端、甘いよい香りが周囲に漂う。
つい口元が緩みそうになる僕の様子にクスリと笑うと真夜さんは建物へと向かった。
すでに何度か来たことがあるようで迷うことなく裏口にまわる。
防犯カメラが冷たい光を放ち、頑丈な厚い鉄板の扉、パスコード入力式のカギと随分と厳重なセキュリティーに守られている。
そこから内部に入ればコンクリートが剥き出しの殺風景な通路が続く。まるで迷路のような複雑な構造になっており、真夜さんの案内がなければ迷ってしまいそうだ。
所々に防音仕様の扉があるだけで人影もなく、カツカツと自分たちの足音だけが響いて聴こえる。
それから気になったのが監視カメラの数だろう。曲がりくねった通路に死角が生じないように設置されている。だからか、常に誰かに監視されているようで落ち着かない気分にさせられるのだった。
「ここは、いったい……」
「ある界隈の方々ご用達の撮影スタジオかな。警備スタッフが常に目を光らせているから怪しい挙動とかは控えてね」
そう告げられたからか、静まり返った建物内にはピリピリとした緊張感を強く感じる。
ようやく通路を抜けるとエレベーターが現れた。それに乗り込み五階へのボタンが押されて上昇を開始するが、その動きが止まってもなぜか扉は開こうとはしない。
彼女は慌てる様子もなく、ただ頭上にあるカメラに向かって軽く振る。すると、それに呼応するようにようやく扉が開くのだった。
(なんだよこれ、絶対普通の場所じゃないよな……)
先ほどと同じような造りの通路がまた続く。そこを平然と先を歩く彼女の後ろ姿に僕は言いようのない不安を感じていた。
こちらのそんな心情など関せずとばかりに彼女はスタスタと先へと進んでいき、慌てて置いて行かれないよう追いかける羽目になってしまう。
「えーと、今日はここよね……さぁ、入って、あぁ大きな声は出さないでよね」
防音式の重い扉を開けて中へ入るように促される。
そこは六畳間ほどの薄暗い小部屋で右手の壁一面には鏡に張られ、天井からは大きなモニターが吊り下げられていた。
その正面にポツリと一脚の椅子だけが置かれている。背もたれが長く、座面の一部がコの字に抉られた奇妙な造りで、随分と頑丈で重そうな黒い革張りの椅子だった。
そこに僕は座るように指示すると、背後にあるパネルを彼女は操作する。
すると、目の前のモニターには、ある映像が映し出されるのだった。
「――えッ?」
画面に映るのは西洋の拷問室を彷彿されるような部屋だった。赤を基調とした内装の室内には天井から鎖やロープが垂れ下がり、三角木馬や磔台に分娩台のような椅子やギロチン台まで置かれている。
その中央には黒いシートがひかれた円形のベッドがあり、そこに背中に恐ろしい刺青をいれた男たちが群がっていた。
どの顔も厳つい顔をしており、中には大きな切り傷を顔に刻んでいる者までいる。どう見ても堅気の人間には見えない連中だった。
そんな集団の中央にはひとりの少女がいた。
よく細身の身体でありながら実りある乳房の持ち主で、その裸体が黒革の拘束具によって自由を奪われていた。
両腕は背後で揃えされられ、指先から二の腕まで黒革の袋で覆われていた。
袋口から伸びた二本のハーネスが両肩からまわされ、胸の上で交差して脇の下から戻っている。その上、複数のベルトによって袋の上から幾重にも締め付けられているのだった。
その拘束具――アームバインダーの指先位置に設置されたリングには、天井から垂れ下がる鎖が繋がれて引き上げており、ベッドの上に膝をついた少女に前傾姿勢を強要していた。
スラリと長く美しいラインを描く脚には太ももと足首にそれぞれ枷がはめられている。お互いを離すようにその間に金属製のパイプが噛まされていて、脚を閉じられないようにされていた。
頭には全頭式のマスクが被せられており、目などの穴はなく、口元には横にファスナーが走っている。頭部全体を締め付けられて顎まで固定されて為に喋れないのだろう。鼻の小さな孔からスピーッ、スピーッとわずかな呼吸音にまじって呻きが聴こえる。
首には鋲が並ぶ肉厚の首輪がはまっている。その厚みだけで首を自由に下げられないほどだ。そこに繋げられたリードがベッドにサイドに括り付けられていた。
剥き出しの乳房は、枠だけのブラジャーのような拘束具によって根元を締め付けられている。そのために大きめの少女の乳房は砲弾のように突き出されてボリュームを大きく増していた。
その先端にある綺麗な桜色の乳首には小型な万力――ピンチによって挟まれている。身体が揺れるたびにピンチに繋げられた錘が左右に揺れてしまって、その反動で乳首を引き伸ばしてしまう。
ウエストに装着されているのはコルセットだ。恐ろしいほど括れるまで締め付けられており、そこから伸びたベルトに網タイツが吊られている。
股間を覆うのは黒ゴム製のショーツだ。股間を縦に走るファスナーの隙間から伸びる派手なピンクのコードが三本ほど垂れ下がり、それはシーツの上に転がる同色のボックスへと繋がっているのが見える。それがヴァイブレーターなどの淫具のコントローラーなのは僕でも知っていた。
黒で統一された拘束具とは対照的に少女の柔肌は雪のように白く、そのアンバランスさもまた目を惹いていた。
「な、なんだよ、これは……」
ベッドの上で拘束されている少女に男たちは手を伸ばして乳房を揉み立て、汗の浮き出る白い肌へと舌を這わせていく。
切なげに身悶えする少女の肌は塗りつけられた唾液で濡れ光り、歯形や赤い指痕がすでにいくつも刻まれていた。
弱った獲物へと群がるハイエナのように、男たちは下碑た笑みを浮かべて拘束された少女へと愛撫を繰り返していくのだった。
その卑猥で悲惨で刺激的な光景を前のして、続く言葉を僕は失っていた。
「どう、驚いた?」
背もたれの陰から顔を覗かせた真夜さんが面白そうに僕に聞いてくる。キスもできそうなほどの近距離に綺麗な彼女の顔があった。
突然、見せられたSMプレイの映像。スピーカーからは嬲る男たちの下品な声とわずかな少女の呻き声が聴こえてくる。
それを前にして密室で美人と評判の先輩とふたりっきりでいる状況に、十代の少年に動揺するなというのは難しいだろう。
問いかけにどう反応するか迷ったあげく、ただ首を前後に振るしかできない。
(……もしかして、僕は揶揄われているのかな?)
困惑しきった僕の反応に彼女はクスクスと笑う。学園では凛としてどこか近寄りがたい冷たい雰囲気を感じていたが、今の彼女からはそれがない。
その代わり、なにか危ない気配を持っているのだった。
――ゴクリッ……
小悪魔のように笑い、その濡れた瞳で僕を見つめる姿はどこか淫靡な空気を漂わせてくる。その甘く危険な香りに当てられて、僕の心は激しく動揺していた。
「ど、どういうことですか、冗談にしてはタチが悪いですよ」
「うふふッ、文句をいう割には身体は随分と激しく反応しているみたいだけどなぁ」
渚を口実に連れ出されたことには実際に腹を立ててはいた。だけど、隠しようもなく膨らんでしまっている股間へと彼女の細くしなやかな指が置かれると動揺の方が勝ってしまう。
「や、やめて下さい」
「それは本心かなぁ? 身体はそうは言ってないみたいだよ」
ズボンの布越しに触れてくる彼女の指の感触にすでに息は荒くなっていた。
それに愉悦を感じる彼女の瞳にはランランと輝く嗜虐の光が宿っていた。
這わされる彼女の指先は的確に男のツボをおさえて脳が痺れるような刺激を与えてくれる。その甘美な肉悦に次第に頭がボーッとしてしまう。
「実は渚の幼馴染みっていうアナタのこと、前からちょっと興味があったんだ」
「それは、どういう意味……うぅ……」
「慌てないで、あとで説明してあげるから、今はもっと気持ちよくしてあげる」
彼女の指がズボンのファスナーを下げ始めていた。彼女による快楽にとらわれた僕はそれを止めることができなかった。
パンツの薄い布へと冷たい指がそっと触れてくる。先ほどまでとは桁違いの感触に思わず僕は背を反らして情けない声を挙げてしまっていた。
「女の子みたいな可愛い顔しているのに、随分と立派なものを持っているのね。あぁ、凄く硬くって熱いわ」
「うぅぅ……あッ、あぁ、ダメッ、それ以上は……」
ズボンのベルトまで緩められて指がパンツの中まで侵入してくると、激しく勃起している怒張へと直接触れてきたのだった。
冷たくヒンヤリした指が肉棒へと絡みつき、ゆっくりと扱きはじめる。
それだけで自慰する時よりも遥かに甘美な刺激が全身に駆けめぐる。
気力を振り絞り止めようと彼女の腕を掴んでみたものの、すでに力の入らない僕の指先は簡単に振りほどかれてしまう。
それどころか隠し持っていた手錠をガチャリと手首にはめられ、背もたれの方へまわされてしまう。
「もぅ、邪魔するならこうだよ」
背もたれの裏に固定する場所があるのだろう。反対の輪っかも繋がれて右手を封じられてしまう。
「あぁ、な、なにをするんですか」
「うふふ、イイことよ」
素早く僕の左手にも手錠をはめて同様に封じてしまう。不意を突かれたとはいえ、簡単に両腕を背もたれの後ろに固定されて僕は自由を奪われてしまっていた。
手錠からはズッシリとした金属の重さを感じる。振りほどこうと足掻くもののガチャガチャと金属音を空しく響かせるだけで、壊れる気配すらない。
「あんまりやると手首が切れちゃうからね」
「なら、自由にしてください」
「ふふふ、ダメよ」
僕の抗議を笑い流して、代わりにその柔らかな唇が重ねられた。
不意のキスに目を白黒している間に、唇をこじ開けて柔らな舌が口腔へと侵入してくる。
「――うむぅッ……んッ……んぅ……」
両手を封じされて覆いかぶされては、逃げることも振りほどくこともできない。
初めてのキスの甘い感触に脳は蕩けさせられ、肉茎を扱かれる悦楽とともに思考は完全にピンク色の靄に包まれてしまう。
もう彼女が与える刺激に抗うこともできず、快楽に身を委ねてしまっていた。次第にピッチをあげていく愛撫によって女の子のような喘ぎをあげることしかできない。そうして、次第に追い詰められていった。
「うぅ……あぁぁ、ダメッ、ダメだよぉ」
「ほら、あっちの子も逝きそうだよ。どうせなら一緒に逝っちゃいなさい」
耳元で囁かれる言葉に導かれて瞼を開き、視線をモニターに向ける。
そこには無数に手によって全身をまさぐられる少女の姿があった。
切なげな喘ぎ声をあげて激しく身悶えしていた。そのたびに全身の自由を奪う拘束具がギチギチと皮をしならせ、ジャラリと鎖を鳴らしている。
その悲惨で無惨な姿がさらなる烈情を僕に呼んでいた。脳に電流を流されたような激しい興奮にさらされながら、僕は拘束された少女が絶頂するのに呼応するように射精をしてしまうのだった。
複数回にわけてパンツの中で激しく放出される白濁の精液。その特有の強い匂いを室内に拡散させながら、脳を痺れさせる開放感に僕は身も心も浸ってしまうのだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「凄く濃いのがいっぱいでたね」
パンツの中から抜き出した彼女の手にはドロリとした精液がこびり付いていた。それを嫌がるどころか、嬉しそうに舐めとってみせる。
「でも、まだガチガチに硬いわ。それに鍛えているから一回だけで終わりなんて言わないわよね」
「あぁ、なにを……」
ズボンのベルトを抜き取り、脱がしにかかられて激しく動揺する。
だが、射精したばかりの身体は脱力したままで、敏感になったままの怒張に触れられると簡単に骨抜きにされてしまう。
「邪魔だからね。それにパンツが濡れたままだと気持ち悪いでしょう?」
脚から抜き取ったズボンに続きパンツまで脱がされて下半身を裸にされてしまった。
器用に衣服を?ぎ取っていく傍ら彼女も自らの服を脱いでいた。その下に隠されていたレースを贅沢に施された黒いガーダーストッキングの下着が露わになる。
モデルのように均整のとれた見事なボディがそこにはあった。それに加えて身につけている大人びな黒の下着が僕の興奮を嫌でも高めてしまう。
彼女に指摘されるまでもなく、僕の股間は痛いほど勃起して、とてもおさまりそうになかった。
「さぁ、もっと愉しませてね」
娼婦のような淫靡な姿をさらした真夜さん。妖艶な笑みを浮かべた彼女の手にはいくつものベルトが握られているのだった。
Copyright(c) 2023 KUON All rights reserved.